ブックスエコーロケーション

「SFとボクらの場所」をテーマにした本屋のブログです。実店舗はありません。開業準備中。

9月のまとめ『未必のマクベス』など

読んだ本の数:7冊
読んだページ数:1213ページ

ニッケルオデオン 青 (IKKI COMIX)

ニッケルオデオン 青 (IKKI COMIX)

■ニッケルオデオン 青 (IKKI COMIX)
 毎度同じことを書いているような気もするけれど、本当にどの話も短さのなかですばらしいバランス感覚が発揮されていて、なおかつ女の子がかわいい。言うことありません! 「持ち直したのかよっ」IKKI後の新雑誌でも願わくば。読了日:9月30日 著者:道満晴明


11 eleven (河出文庫)

11 eleven (河出文庫)

■11 eleven (河出文庫)
 読書会用。はぁ〜ほんとうにすばらしかった。舐めるようにちびちびと11篇を堪能した。美しさを言葉で描くことが極まっている。どれもすばらしく、本当にどれが一番とか言えない。津原泰水の短篇ベスト・セレクションだ。ちなみに長篇はもちろん『バレエ・メカニック』だ。あと美についてだけでなく、ライフヒストリーをほんとうに巧みに小説に落とし込めるのもうらやましい。実作者には刺さりまくる超絶技巧小説集だった。読了日:9月23日 著者:津原泰水


■シャーリー 2巻 (ビームコミックス)
 シャーリーってよくケガしてるような……いや年齢から考えればぜんぜんまだまだ膝をすりむくのが日常であってもおかしくないわけで、そういう意味ではすごく落ち着いている、ようにみえるように描写されているんだな、と思いつつ、いやそうでもないのかと思いもするわけで、その二重性がさらりと描かれているのがさすがだなぁと。読了日:9月16日 著者:森薫


■逃げても逃げても (フラワーコミックスアルファ)
 よかった。細部にほんとに雰囲気があってよい。特によかったのは「その13」の喫茶店のマスターだった。ああいうのうれしいよなぁって。にしてもこれほどライフヒストリーに添って描かれたように見える作品に「逃げても逃げても」というタイトルをつけられるのか。すごいな。読了日:9月16日 著者:ねむようこ


ベアゲルター(1) (シリウスKC)

ベアゲルター(1) (シリウスKC)

■ベアゲルター(1) (シリウスKC)
 いやーかっこいい! にしてもすごくいいところで話が終わっているので続きが早く読みたい。エロスとバイオレンスというよりも伝奇と科学っていう感じが非常に好みだ。痛快さは突き抜けていて、でも笑いもあっていいなぁ。しかしこの刊行ペースだと完結するのはいつになることやら(気にすることはそこか。読了日:9月16日 著者:沙村広明


甘々と稲妻(3) (アフタヌーンKC)

甘々と稲妻(3) (アフタヌーンKC)

甘々と稲妻(3) (アフタヌーンKC)
 前にも書いたかもしれないけれど、食べることは日々の生活に根ざしているから、逃れようがないし、思い出もあるのだなと思わせられた。やはり白眉はドライカレーの回だろう。読了日:9月6日 著者:雨隠ギド


未必のマクベス (ハヤカワ・ミステリワールド)

未必のマクベス (ハヤカワ・ミステリワールド)

■未必のマクベス
 すばらしく上質なハードボイルド小説だった。冒頭の旅についての文章――硬質な文体から立ち上ってくる雰囲気がとてもかっこよく、それだけで背筋が伸びるようだった。こういうかっこよさは矢作俊彦『リンゴォ・キッドの休日』に通じるものがあった。そしてそれは「王」というキーワードにも象徴されていた。香港、澳門東南アジアを舞台に、企業内コンゲームと初恋の思い出をスパイスに、スタイルとしての王、その失墜の旅程がブレなく描かれる。スタイルを貫くことがハードボイルドのひとつの指標であるならば、主人公・中井優一は図らずとも王への道を歩み始め、王として旅を続けることによって逃れようのない失墜へと向かっていく。『マクベス』を下敷きにしてることからも明らかだが、その落下の過程は輝きすら放っているように思え、ラストの章は(恋愛小説としても)ほんとうに美しい情景が描かれる。最後のシーンには読者であるにも関わらず、なつかしさすら覚えてしまう、そんな読書体験ができる作品だった。読み終え、タイトルが腑に落ちるというのも好きなんだよなぁ。読了日:9月5日 著者:早瀬耕