ブックスエコーロケーション

「SFとボクらの場所」をテーマにした本屋のブログです。実店舗はありません。開業準備中。

7月のまとめ

読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2117ページ
ナイス数:39ナイス


拡張幻想 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

拡張幻想 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

■拡張幻想 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)
 ようやく。2011年ははやぶさ、3.11、小松左京伊藤計劃とわかりやすいモチーフが多かったのかなと。特に好きだったのが「いま集合的無意識を、」「美亜羽へ贈る拳銃」「超動く家にて」「良い夜を持っている」そして受賞作の「〈すべての夢|果てる地で〉」かな。特に「美亜羽へ贈る拳銃」はやはりこちらのエンディングのほうがよいですし、背景も含めやっぱり強く同時代性を感じた作品でした。読了日:7月30日


宝石の国(1) (アフタヌーンKC)

宝石の国(1) (アフタヌーンKC)

宝石の国(1) (アフタヌーンKC)
 ああ、もうなんてすばらしいのか。フォスフォフィライト、シンシャ――性別のない無機生物として宝石の名前を冠されたキャラクターたちと、彼らを装飾品にしようと襲いかかる月人との闘いが描かれる市川春子の新作はただただ強くて儚くうつくしい。表情や髪や姿態にあふれるフェティッシュさに磨きがかかっているし、彼らがどんな生態系を持っているのか、小出しにされる情報から想像が止まらなくなる。何よりも宝石たちの関係性が各人で切実なドラマを持っていてそれだけでもお腹いっぱいになる。表紙はぜひ手にとってじっくりと眺めてもらいたい。読了日:7月26日 著者:市川春子


ヴィンランド・サガ(13) (アフタヌーンKC)
 おおおお。ついにタイトルに言及が! 思えば遠くまで来たものだ。しかしここから先、トルフィンの行く道はさらに険しく遠くなることを思えばまだまだ読者としては楽しめそうだなぁと思うのだ。読了日:7月25日 著者:幸村誠


南極点のピアピア動画 (ハヤカワ文庫JA)

南極点のピアピア動画 (ハヤカワ文庫JA)

■南極点のピアピア動画 (ハヤカワ文庫JA)
 読書会用。わはは、いやーこの展開はちょっと想像がつかなかったですね。お見逸れしました。初音ミクにメイカーズ精神とSNSとファーストコンタクトがうまーくマッシュアップされててすごくうまいSF小説になってますわ。文化祭準備のノリを突き詰めていった先にある、どこかハイな未来。でもその底意にはどこか現生人類への冷めた視線が感じられる。野尻抱介の作品に持っていた印象を変える一冊でした。読了日:7月16日 著者:野尻抱介


STEINS;GATE 閉時曲線のエピグラフ (ファミ通クリアコミックス)

STEINS;GATE 閉時曲線のエピグラフ (ファミ通クリアコミックス)

STEINS;GATE 閉時曲線のエピグラフ (ファミ通クリアコミックス)
 イケメンのダルよりも何よりも、オカリンが髪をおろしてテニスサークルで合コン三昧という事実に慄然としているところで「異議あり!!」はさすがのかっこよさだぜ、まったく無茶しやがる。読了日:7月12日 著者:吉田糺,志倉千代丸


町でうわさの天狗の子 11 (フラワーコミックスアルファ)
 早とちりから本領を発揮して後戻りできない展開になってしまうところがまったくいじらしいなぁ。秋姫にとっての瞬も、その逆も「ボロボロのカーディガンじゃない」ってことなんだぁ。読了日:7月12日 著者:岩本ナオ


ゲノムの国の恋人

ゲノムの国の恋人

■ゲノムの国の恋人
 プルーフで。押し出しは弱いけれど生真面目な、つまり純日本人的な理系研究者・タナカが将軍閣下の姫君選びのためにやってきた、妖しい独裁国家に翻弄される様に手に汗握り、奇想天外さにクスクス笑いつつも、彼を始め七人の姫君や将軍閣下、ラワヤ兵長の魅力的なキャラクターたちから目が離せなくなってしまう。その根底にはきっと、ゲノムから見れば「世界中どこでも同じ」という、大きな愛があるのだろう。まったく瀬川深の小説はとっても愛らしくてユニークだなぁ! 読了日:7月7日 著者:瀬川深


ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
 宮内悠介のSF連作短篇集。歌うことを目的としたホビー・ロボットDX9を軸にめちゃくちゃうまいストーリーテリングで読ませる。どの短篇もハードなモチーフがまずあり、それに惑わされている間に気がつくと非常に人道的な感動が襲いかかってくる。読了後、唸るしかない。かといってSF的なモチーフの切り取り方は目新しいわけではないんだけれど、もっと突き詰められるけどここまでにしておかないと筋が歪になってしまうからという絶妙なさじ加減が感じられる。でもきっと普遍的な「いま」が切り取られている。やっぱりうまいんだなぁ。読了日:7月5日 著者:宮内悠介