ブックスエコーロケーション

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『永久帰還装置』

永久帰還装置 (ソノラマ文庫)

永久帰還装置 (ソノラマ文庫)

 高次存在による「正義」の執行から「人間の正義」へと見事に落着させているメタフィクション。最初に大きな謎を提示し、それを会話と語りでどんどん解明していき、気がつくといつのまにかページがどんどん終わりに近づいている。饒舌な語りが理路整然と狂気を語るのはずいぶんと愉快。だれに感情移入して読むかによるのだろうけれど、おれはとりあえず「蓮角」を基準に物語を構築していった/読んだ。大統領官邸での会話の噛み合わなさは、それでも読者には理路整然と読めるあたり、どんな思考で文章を書いているのか想像できず、恐い。神林長平は『膚の下』でもそうだったけれど、どうしてそんな視点で人間を見られるんだ!と叫びたくなるような視点で物語が展開されてマジでびびる。あと猫売りの情景はとても好き。