- 作者: 幸村誠
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/02/23
- メディア: コミック
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幸村誠はモブを描くのが本当にうまいね。アシェラッドの背景が描かれることによって「時代」と「伝説」とが融合した「社会」をきちんと描き出しているのではないか、と思う。絵、そのものの書き込みがしっかりしているから本当に読むところが多い。
物語そのものはトリビア的な歴史の開陳と逃避行がメインであるのだけれど、それをしっかり丁寧に描くことで骨太なストーリー展開となっている。でも、もうちょいトルフィンに注目して欲しいような、ってこれまでの3巻でやってるからそれでいいのかもしれないのだけれど、つーかむしろこの巻はアシェラッドが主人公なわけでしてクヌート殿下とトルフィンの会話ぐらいしか印象が残らない……。
あと思ったのはトルフィンの親父・トールズが死してなお登場人物の動機の中心に位置付けてあって、物語の駆動にきちんと色を添えている。そういう意味ではきちんと北欧神話だわいね。でもって土地柄的にアヴァロンも絡んできたし、それを全部踏み越えた先に「ヴィンランド」があるのかしら。そういう意味では宗教的な背景のないトルフィンが目指すにはうってつけかも。ま、まだ怨讐があるけれども。
あとやっぱりというかなんというか幸村誠は「愛」を描かなくちゃいけんのですね、どうやら。これが彼の作品の通奏底音なのですな。