- 作者: 川端裕人
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2002/05/10
- メディア: 文庫
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その第15回目を受賞した、作者の「小説家」としてのデビュー作。
ライトミステリーな筋立てとか書いてありましたが、おもっくそハードSFでした。
特に印象的だったのは、単にロケット打ち上げに苦心する夢見がちな大人だけを描くのではなく、
「宇宙開発」⇔「軍事開発」
「ロケット」⇔「ミサイル」
という宇宙開発が国威掲揚軍事開発に応用されてきた側面を持っていると、ロケットとミサイルの違いは、フェアリング(先端部)に人工衛星か核弾頭を積んでいるかという程度であることなどを、きちんと丹念に描いていることです。
物語も、「ミサイル」製作中の爆破事件を調査する主人公が、高校の頃の天文部ロケット班で作っていた「ロケット」と同じ部品を発見するところから始まります。
ただただ自分の好きなことに埋没するだけでなく社会と事物のつながりを描くことによって、
自意識の及ぶ範囲だけで物語が進行する昨今の有象無象ライトノベルとは決定的に一線を画いており、
それがすばらしくすがすがしい「青春小説」としての側面をも切り出していました。