主人公、六合鴇時は人と妖とその狭間の存在だ。近未来からSFガジェットが下地な江戸へと飛ばされた彼は、天網/アカシック・レコードに記載されない、流浪の、所在のない、異界における境界者だ。しかしそんな彼も、7巻ものあいだにアカシックレコード/メタレベルでのゲーム管理者の身勝手によって喪いたくない、と思えるような、そういう関係を得る。そして失う。再度、それを得る/取り戻すために彼は7巻目にして、ようやく「人間」となる。ああそうして、人と成って果てるのだ。さぁ「雨夜の月」の、終わりの始まり、その幕があがった。
そう、おわかりの通り、彼は、婦警だ。セラス・ヴィクトリア。彼女にひどく似ている。もしかして鬼にとなって童に追われるのか、その童になるのか、それともまったく別のなにかとなるのか。うん、ずいぶん楽しみだ。どんなアプローチがあるのだろうか。
にしても、7巻は時間をかけすぎではないのか、と思わないでもない。でも絵がうまいから許す。あとてっきりゼロサム系だと手に入れたカップリングを放棄しないものと思っていたけれど、設定の書き換えっていう設定はうまいな。だって失っても、もっかい書き直せるかもなんだぜ。この、かも、がうまいんだよなぁ。郷愁と名づけてもいいかもね、このテクニック。