ブックスエコーロケーション

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第1回小学館ライトノベル大賞

小学館::ガガガ文庫

 冲方丁仲俣暁生も真摯に酷評しているし、受賞者を伸ばそうともしているのが、なんとも言えず好感触。特にこことか、

(前略)破綻を恐れずに熱意を込めて書くことは大切だが、自分のアイディアに責任を持たず、逃げ場を探すような終わらせ方は、自ら厳に戒めて欲しい。未熟であることは決して悪ではない。というより当然である。だが、未熟であることを意識せずに済むような書き方は、本人にとってもそれを読む側にとっても、百害あって一利もない。書き続けることで、今日は分からなかったことが、明日は分かるようになる、そういう単純な努力を無限に反復できる心を、何より手に入れて欲しい。

 こことか、

(前略)それは「オリジナリティの欠如」ということではない。ジャンルの約束ごとをふまえながら、その制約のなかで作者が書きたいことが十全に書き切れていれば、その作品はジャンルの壁を越えたのと同じである。オリジナリティや完成度より、突破力を評価しよう(後略)

 がかなりよかった。
 言っていること*1はそのまま高校出たての大学同人誌小説にも言えそうで、思わず苦笑。そうそうそういう時期もありました、おれにも。今は熱意よりも、文章を磨くことの方がおもしろくなってきてるから、そのあたりのバランスを再度見つめ直さないとなぁ。文章も読めて、キャラも設定も魅力的で、物語もたまらなくおもしろい。これね、これが目指す先よ。

 で、このライトノベルレーベルとしては後発の後発の、この賞の実験的で評価できることはなにかって、大賞の賞金が200万ってのも大きいけれど、期待賞ってのがむしろKASUKAは注目で、なんとデビューはできなくても生活保護みたいな感じで1年間月2万円がもらえるというもの。…これで本を買って読みなさい、ってことなのかしら。すっげぇ魅力的。働いていると、お金の価値がはっきりしてきてなんだか、この賞がよく考えられているように思えてしまうね(笑)。あと、プロが応募してもいいってのはむしろこの期待賞で、ってのもあるのかしら。
 いや次回は九月だから、狙ってみようかしら。
 小学館::ガガガ文庫

*1:そしてライトノベル作家とその読者が描く小説の稚拙さの致命的な原因を的確に指摘し、選評にしたのは正直画期的であり、最高のボトムアップにはつながるのではないのか、と思った。ちなみにはKASUKAはスターゲイザーなので下は読む気になれませんので、仲俣暁生はともかく冲方丁はすっげぇ根気があるなぁ、とも思いました。