ブックスエコーロケーション

「SFとボクらの場所」をテーマにした本屋のブログです。実店舗はありません。開業準備中。

2月のまとめ

読んだ本の数:6冊
読んだページ数:1319ページ

■ハーモニー(2) (角川コミックス・エース)
 今回もすばらしかった。原作の要素をきちっと拾いつつ、『虐殺器官』への目配せもあり、原作では描ききれていなかったガジェットの描き込みやトァンの表情の変化(化粧でごまかすところが最高)など、まさに完全版の名にふさわしい『ハーモニー』だ。読了日:2月27日 著者:三巷文


成功者K

成功者K

■成功者K
読了日:2月22日 著者:羽田圭介


SFが読みたい! 2017年版

SFが読みたい! 2017年版

SFが読みたい! 2017年版
 今年はひじょうに表紙が強い。珍しいことに海外の1位は読めてた。読了日:2月15日 著者:S‐Fマガジン編集部


淡島百景 1

淡島百景 1

淡島百景 1
 きらきらしたものの、その代わりを描くことでぼんやりと中心が見えてくる。世代をまたいで描かれることもまたそれに重みを追加している。読了日:2月8日 著者:志村貴子


■火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン)
 最後の短篇にあるように「生への執着」が大きくストーリーを駆動させるモチーフになっていて、こういうサバイバルだけで読ませる短篇にしてしまえるのはさすがだなと思った。ボクシングものがあるのもきっとそこにつながるのだろう。ちょっと奇想っぽいものもラストの放っておかれ具合が絶妙だなと思った。読了日:2月6日 著者:ジャック・ロンドン


溺れた巨人 (創元SF文庫)

溺れた巨人 (創元SF文庫)

■溺れた巨人 (創元SF文庫)
 もともと読むのが早い方ではないのだけれど、これは本当に時間がかかった。病的な妄執に囚われる人物が描かれることが多いのだけれどそれが辛かったのかなぁ。よかったのは「溺れた巨人」「スクリーンゲーム」か。読了日:2月5日 著者:J.G.バラード

まつもと演劇工場連動企画 宮澤賢治ビブリオバトル

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 今回お誘いいただいて半杓亭でのビブリオバトルに参加してきました。
 結果、なんとチャンプ本に選ばれました~。ありがとうございました。
 飛び道具すぎて選ばれるとは思っていないかったので、めちゃくちゃ挙動不審になっていたと思います。もっと素直に喜んだりお礼を言えたらよかったですね。うーん、なかなかむつかしい。
 でもほんと選んだ本の力だなぁと思ってます。なので、どんな感じで語ったのか。その説明のもとにした原稿を公開しようと思います。この通り話したわけではないですが大筋でこんな感じでした。

こんにちは、やつはみ喫茶読書会の主宰をやっています。ビブリオバトル、実はそんなに得意ではないのですが、一生懸命やらせていただきます。よろしくお願いします。
にしても、さすがに演劇をやっておられる方々はしゃべりが上手ですね、さいごというのはこう、緊張が高まって一周回ってふわふわしてしまいますね。ここまできたらなにをしゃべってもしょうがないというか。
さて、今日そんなふわふわした感じで紹介するのが、これです。
『ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ』です。
そう宮澤賢治の本そのものではなく、トリビュート本です。高橋源一郎という作家が書いた小説です。
トリビュート、おわかりですかね。音楽ではよくあるやつですよね。
なので、この本も24篇の短篇が収録されているんですが、音楽になぞらえてかA面とB面があります。
収録タイトルは、「注文の多い料理店」、「セロ弾きのゴーシュ」、さきにとりあげられた「オッベルとゾウ」などなど聞いたことのあるものがいっぱいあります。
ただ音楽になぞらえて言えばこの本に収録されている小説はコピーでもなければ、カバーでもありません。原作を継ぎ接ぎししたマッシュアップとも異なります。オリジナルです。完璧に。紛れもなくオリジナルです。唯一タイトルが同じだけ。そう同じ題名でありながらまったく別の作品になっています。であるにもかかわらず確かに宮澤賢治を感じるんです。そこがすごいし、おもしろいところなんです。
なかでもとくに好きな一篇は「永訣の朝」です。
もとになった「永訣の朝」は宮澤賢治の妹が亡くなる日をモチーフにしたと言われる一篇ですね。
けふのうちに
とほくへいってしまふわたくしのいもうとよ
みぞれがふっておもてはへんにあかるいのだ

では、高橋源一郎は同じ題名でどんな小説を書いたのか。
あるバーで朗読会が開かれます。ただそのバーで行われる朗読会には、演者がいません。朗読するひとはやってきたお客さんなんです。やってきたお客さんが即興で「シ」を読みます。あるお客は人生に疲れ切っており飛び降り自殺を示唆します。ある少女は自分が学校でも家庭でも透明であり限界であることを読みます。さらにそこのマスターは寝る前にいつも死ぬ瞬間の情景をさまざまに思い描く人物であったりします。そうです、この物語で語られる「シ」は「詩(ポエム)」であり「死(デス)」でもあるんですね。
そしてそれは、本来の「永訣の朝」に通じてきます。
妹の死を通じて描かれる詩です。
生きて死ぬことをどのように捉えるのか、両方ともそのことについて書かれた作品であるなと思いました。
実際いま日常を生きていくうえではそんなことをあまり考えることなく生きていくことができます。
ですが、この小説、あるいは原作となった詩を読むことであたかも自分のことのように考える、そういう契機になる作品です。おすすめです。

 どうでしょうか、読みたくなったでしょうか。
 下の画像は当日のお茶とお菓子でした~。かわーいー。
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1月のまとめ

読んだ本の数:5冊
読んだページ数:1157ページ

断片的なものの社会学

断片的なものの社会学

■断片的なものの社会学
 すごくよかった。あまりに断片的なエピソードがとにかく小説的なエッセイだった。読書中に著者の別作品が芥川賞候補にあがっていたのも思わず納得してしまう。描かれるテーマは「解呪」であるように思った。読了日:1月30日 著者:岸政彦


カブールの園

カブールの園

■カブールの園
 くうー「カブールの園」、めちゃくちゃカッコいい。現代SFにしてアメリカ文学のカッコよさ、そして「半地下」に見られた自伝的要素が変奏され、ほんとうにうまく絡みあっている。特にラストのプレゼンのくだりがたまらなくカッコいい! 単にマイノリティ文学と言ってしまうと取りこぼしてしまうものがいっぱいある豊かさがほんとうに素晴らしい。これは、大好きな小説だ。読了日:1月8日 著者:宮内悠介


本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

本屋さんのダイアナ (新潮文庫)
 読書会用。めっちゃ面白かった!いやーよかった!読めてよかった!構成が巧みだから、彩子の積み上げてきたものを崩すところとかノワールかってぐらいエグいし、そこからの解呪がまたよくてよくて。いやーほんといい小説だ。一方で読んでいる最中に自分のなかの偏見とかそういうのをきりりと突きつけられるのもまた、よい少女小説っていうことなのかなって。うん、大好きな1冊ですね。姪が大きくなったら勧めたいw 読了日:1月8日 著者:柚木麻子


Fate/Grand Order material III

Fate/Grand Order material III

Fate/Grand Order material III
Fate/Accel Zero Order」イベントまでの登場サーヴァントが掲載されている。読了日:1月6日 著者:TYPE-MOON


雪と珊瑚と (角川文庫)

雪と珊瑚と (角川文庫)

■雪と珊瑚と
 まだ人間的に幼い珊瑚と、その娘の雪の、成長譚。梨木香歩に特有の、スピリチュアルめいたところがより具体的な信仰と食事のふたつに振り分けられているので比較的、読みやすかったように思う。というかすごく読みやすかった。ただ明確なストーリーはあるものの、珊瑚と雪の行末は開かれたかたちで終わっている。これはまだ彼女たちの人生は続いていく、ということなのだろうなぁ。読了日:1月3日 著者:梨木香歩