ブックスエコーロケーション

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『伊藤計劃記録』

伊藤計劃記録

伊藤計劃記録

 よく考えたらもう読んだことにしてもいいんだなと、後輩と話していて気がついた。収録されている短篇もインタビューもエッセイもほぼリアルタイムで読んでいたし、映画評も第弐位相でひと通り読んでいる。思い出したように、そういえばこれの時に彼はなんて言っていたかな、と調べるときに積読ダンボールの中よりもちゃんと本棚に置いてあった方がいいと思っていたらいつのまにかしたり顔で2007年11月号のSFマガジンの隣に並んでいた。映画評の目次のなさにはがっかりしたけれど、祭谷一斗氏のhttp://maturiyaitto.blog90.fc2.com/blog-entry-343.htmlを挟んであるのでもう大丈夫。様々な媒体で発表された思考の流れを追うことで、書かれた小説がそうあるべきものだったと気がつかされる体験は『ハーモニー』で体験し、でも『屍者の帝国』では自分の知識のなさからわからなかった。いまにして思えば追えることから「考えてもらっていた」のだろうな、と。おれが自分で考えていたわけではなくて思考をトレースしてただけで作品外からの情報がないとわからない、というのはかなり情けない。でもそういう稀有な読み方ができたのは後にも先にも彼の作品だけであることは忘れるつもりはない。さて今月下旬には『記録:第弐位相』が発売になるけれど、そこではどんな切り取り方がなされているのか、楽しみである。さあ見せてもらおうか、という感じ。