大きな謎と普遍的な問いかけとその15人以上の回答で、ぐいぐい読ませる読ませる。圧倒的ですばらしい群像劇でした。巻の区切れがちょうどよい小休止になっていて、なっているのも気にせずどんどん続巻に手を伸ばしてしまう。完結してから時間をとって一気読みして正解だった。飛び飛びだったら細部を忘れてしまいそうだったから帰省のバスの中でがつがつ読んでいけたのは本当によかった。
色々な伏線が縦横無尽に貼ってあって「どこそこがこうで」なんて書くと速攻でネタばれで迂闊に内容に踏み込んで書くことができないのだけれど、キャラクターの書き分け、都市伝説工学と青春小説としての熱さと斜に構えた感じと狭い視野と性意識とスクールカーストがどんどん溢れて、でも都市は東京はあっさりとそれを飲み込んで、……地理小説という表現が久しぶりに適当と思った。地表の上の「すべて」を小説化してみせたなぁと思った。書き方そのものも参考になったけれど、その姿勢=回答を提示するのではなく物語を通して思考したその過程そのものを重要視する部分に、非常に好感をもった。というか答えはきっと一緒に走りきった読者の中に自然と残っているのだと思う。傑作でした。