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すべてはゼロから始めるために

小説家志望の雑記です。

宮内悠介『ヨハネスブルグの天使たち』

読書

 ヨハネスブルグに住む戦争孤児のスティーブとシェリルは見捨てられた耐久試験場で何年も落下を続ける日本製のホビーロボット・DX9の一体を捕獲しようとするが――泥沼の内戦が続くアフリカの果てで、生き延びる道を模索する少年少女の行く末を描いた表題作、9・11テロの悪夢が蘇る「ロワーサイドの幽霊たち」、アフガニスタンを放浪する日本人が❝密室殺人❞の謎を追う「ジャララバードの兵士たち」など、国境を超えて普及した日本製の玩具人形を媒介に人間の業と本質に迫り、国家・民族・宗教・戦争・言語の意味を問い直す連作5篇。才気煥発の新鋭作家による第2短篇集。

 今回の直木賞の候補にも選ばれた、宮内悠介のSF連作短篇集。歌うことを目的としたホビー・ロボットDX9を軸にめちゃくちゃうまいストーリーテリングでぐいぐい読ませられる。ヨハネスブルグの天使たち」「ロワーサイドの幽霊たち」「ジャララバードの兵士たち」「ハドラマウトの道化たち」「北東京の子供たち」の5編が収められている。どの短篇もハードで読者の琴線をくすぐるモチーフがまずあり、それに惑わされている間に気がつくとストーリー構成による非常に人道的な感動が襲いかかってくる。読了後、唸るしかない。かといってSF的なモチーフの切り取り方は目新しいわけではないんだけれど、どこかもっと突き詰められるけどここまでにしておかないと筋が歪になってしまうからという絶妙なさじ加減が感じられる。でもきっと普遍的な「いま」が切り取られている。この切り取り方が何にかに似ているな、と思い、よく考えると岡崎京子リバーズ・エッジ』だなと。特に「北東京の子供たち」にそれを強く感じた。もちろん団地小説というのも大きいのだろうけれど。この(DX9がもたらしもした)普遍的な閉塞感に対して、どうやって現実を拡張し生き抜いていくのか、その未来を提示してくる。SFに留まらない、とてもうまい小説を読んだ、その感触が強く、かっこいいなぁと。

盤上の夜 (創元日本SF叢書)

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