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すべてはゼロから始めるために

小説家志望の雑記です。

『第9地区/District 9』

映画

  |l、{   j} /,,ィ//|     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ     | あ…ありのまま昨日起こった事を話すぜ!
  |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |     < おれは映画館で『第9地区』を見ていると
  fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人.    | 思ったらいつのまにかトイレで3回吐いていた
 ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ   | 手ブレだとかサブリミナルだとか
  ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉.   | そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
   ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ. │ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
  /:::丶'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ \_________________


 読書会で仲良くなった映画好きの方を誘って、ロビーで雑談している時に『ミスティック・リバー』を押し貸しされていやぁうれしいなぁ楽しいなぁと劇場に座って観ていたらあれよあれよというまに気分が悪くなってしまいました。確かにドキュメンタリーの手法で手ブレの多い画面ではありましたが、そういう視覚的なそれと気持ちの悪い音楽よりも決定的におれが気持ち悪いと思ったのが「想像力のない、やる気だけある不愉快極まりない主人公」でした。立ち退きの交渉も会話がまったく成立していないように見えるは、あっさりと銃はぶっぱなされるは、虚勢と虚栄と動物的な興奮が南アフリカの、混沌としたスラム街で、エビの造形も含めて展開される。でもだからといって具体的にえぐいシーンはきちんと描かれていない。空白で観客に想像させている。中絶のシーンなんか、もう目を瞑っても音が聴こえてくる。隣に人がいるにも関わらず3度、席を立ち、トイレにこもって吐瀉してしまいました。限界は、主人公がスラムに逃げ込み、2度目の電話を受ける当たりだったでしょうか。
 映像や音だけでなく、おれが本当にだめだったのは、きっとここで、Aパートで描かれるような主人公の行動は「誰しもが持ちうる人間として当然の側面」であると「理解してしまった」ということです。「想像力の欠如」した人間の姿。決して悪し様に描かれるわけではなく、ただただそういうものである、と見せられる。おれがどう考えてもくそ真面目に見すぎてしまったせいなのか*1、あるいは人間の知性を信じすぎているせいなのかはわかりませんが、耐えられませんでした。認めたくありませんでした。それが上記のような反応となったのではないかといまになって思います。
 ただ、これはもう単純に、この映画がとても「強い」ということだと思います。恐ろしい強度を持っている。思いっきり殴られたのです。だからD-9から脱出した後、もう二度見たくない、ではなく、このあとどうなるんだろう、ということのほうが気になりました。いったいどういう方向にこの主人公を持っていってくれるのか、そこでようやく送り手側の視点が浮かんできました。観客をこんな気持にまでさせる、すごい映画がどんなオチに向かっていくのか。
 さすがにすぐに二度目を見る勇気はありませんが、必ず、この結末を確かめにいかねばならん、と強く思いました。
 すごい映画でした。こんな映画は初めてでした。

*1:見たくないものに対して「笑い」という方法でコミットしていればこんなに気持ち悪くはならかったのでは、と思います。死体を写メったり、異文化を嘲ったりして、人間は異物を日常化し、均衡します。