すべてはゼロから始めるために

小説家志望の雑記です。

トム・ロブ・スミス『チャイルド44』

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

 スターリン体制下のソ連。国家保安省の敏腕捜査官レオ・デミトフは、あるスパイ容疑者の拘束に成功する。だが、この機に乗じた狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される。そこで発見された惨殺死体の状況は、かつて彼が事故と遺族を説得した少年の遺体に酷似していた……。
 世界を震撼させた超新星の鮮烈なデビュー作!

 傑作エンタメ。バス移動の3時間と新幹線での3時間で一気に読み切った。
 スターリン体制下のソ連って半端なくディストピアで、悲惨で過酷でまったくこれっぽちも現実味なんてないのだけれど、だからこそその非現実具合を体制側の人間から丹念に描き出すことで、ストーリーにサスペンスを与えることに成功している。びっくりするぐらい説得力に溢れている。同じような物語を日本でやろうとしたら、なんか色々と設定を用意しなければならないのだろうけれど*1そんなことをしなくてもソ連は過酷でした。絶対的な悪が国家体制だから法から外れてもぜんぜん気にならないよ!まるで『ダークナイト』だね!
 演出として、うわぁー超やべぇじゃんこれ助かるのかよええマジでマジかよ、おお助かった!というのが多くてそれが結構な回数繰り返されるのだけれど、きちんと伏線になっていたり解決への糸口だったりしていちいちにくい。
 あとレオとライーサの性格がどんどんわかってくるあたりも楽しい。読んでいて思っていたことから行動が外れるのが楽しい。
 いやぁほんと読者サービスに溢れた傑作エンターテイメントでした。

*1:ゴールデンスランバー』のように。