すべてはゼロから始めるために

小説家志望の雑記です。

ぎゃはっはは

 ちょっと思い出して、ガガガ用に手を入れた『スーサイド・ヒューマンズ』を読み直したら、細部細部でいまのおれには絶対に書けない、びっくりするぐらい楽しくておもしろい描写、というか、シーンがあって本当に心底びっくりしてこんな記事をエントリしている。
 はんぱねぇ。なんでこんなキレのある文章が書けたんだおれ。
 えええ、ちょっとどう考えてもいまのおれには無理なんですが…。
 というか、おれの中ではこの『スーサイド・ヒューマンズ』ってのはガガガのハシボウ原稿だったわけで、見直すにも値しない小説だったわけですよ。
 で、今日電撃の応募要項を見直してたら、短編が30枚ってなってて、ふむ、と思って出せるのあるかな、と思ってそいや『スーサイド・ヒューマンズ』っていくつやったっけ、と見直したら48枚で、おし削ってみるか、と思ったのですが無理だったので普通に読み直して、いまの語感で直せるとこは直して、という感じでやってたら「ガガガ応募用に書き足した部分の出来が信じられないぐらいおもしろい」という事実に本気で戦慄した。おれが書いたのか、これ、と本気で思った。ちょっと冒頭の戦闘シーンを引用してみる。

 そして橘はまず――一週間分の鎮痛剤の入った紙袋を投げつけた、ことを思い出した。
 サトミ、といずれわかる女性を三人の男が取り囲んでいて、紙袋は一番手前の、橘にもっとも近い男の背中に命中する。男が振り返る。橘はその時には移動を終えていて、男の視界には誰もいない。橘は男の死角から、がら空きの脇腹へ右の抜き手を放つ。突き刺さる。衝撃に、何をされたのかわからないまま男の意識が途絶する。そのまま崩れ落ちそうな男の身体を橘は力任せに蹴り飛ばす。跳ね飛ぶ男に、サトミに手を伸ばしていた男が巻き込まれてもんどりうってふたりが転倒する。ゴン、と思いのほか鈍い音がする。その音で気がついた最後のひとりが、そこでようやく振り返る。叫ぶ。「なっ、てめ!」叫んで手を伸ばす、つかみかかろうとする。橘は自らその手をつかんでやって、指をひねる。男が目に見えて怯む。そのまま男の腕を背中へとねじりあげて、膝裏を乱暴に蹴っ飛ばし、腕と肩の関節を極めたまま地下通路の白いタイルの上に、正座させる。男は咽の奥で苦痛をこらえている。「ううう」それでも、くいしばった歯の隙間からうめきがこぼれ落ちる。
「嫌がるやつを、巻き込むな」
 耳元でささやいて、橘はさらに力を込める。
 だらだらと脂汗を流して、男がしきりにうなずく。橘は男にゆっくりと顔をよせ、折り重なって昏倒しているふたりを指さす。力はゆるめない。むしろさらに、込める。一瞬うめいて涙目になって男が何度も何度もうなずく。橘は力を抜く。男を解放する。男はうずくまって羞恥と屈辱をうめきにして吐き出すと、肩を押さえながら立ち上がり、歩き出す。昏倒しているふたりに近づくと、蹴り起こして、それでも三人は支えあったり肩を貸しあったりという感じとは無縁に、ひとりひとり歩き出す。そうやって三人が地下通路から消えるまで橘は彼らを見続けて、そこでようやく残心を解いた。

 そうか、これを書けたのか…と、とてもうれしくなった。
 でも削っても45枚にしかならなかった。はぁ、なんだろ、純文学系で準短篇を受け付けてくれるとこってあったかな。もうちょい追加したいエピソードもできたけど、まぁ多分よくて中篇なんだけど…。