ブックスエコーロケーション

「SFとボクらの場所」をテーマにした本屋のブログです。実店舗はありません。開業準備中。

オレイチ!

 季節が変わり、夏休みが始まろうとしています、世俗では。そろそろ話題の文庫でかためて平台にしているいさかん*1を別のものにしようかと、考えています。季節感。昨年1年の雑誌担当でそのあたりは心得ておりますです、ええおそらく。
 というわけで、オレイチ!こと文庫担当者のおれがお勧めする、夏休みに読むべき文庫10選、いくぜッ!!

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

 まぁ舞台だしな、SFだしな、このどんぴしゃな時期に読んで、作中で言及されている小説に興味を持ってもらえたら、さらにいいな。まぁおれはサイン本持ってるけどな(自慢
 そういえば、新城カズママップス・シェアードワールド -翼あるもの- (GA文庫)でもSFと青春小説のすばらしいハイブリットを、その一文目からばしっと提示していて震えたな、労働中に。


グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

 夏だしな、永遠の夏休みだしな。予断はあるが躊躇はない。一糸まとわぬSFが、水平線のかなた、白く高く屹立するのだ!ああなんという荘厳さ。ぜひ知ってもらいたい。この絢爛さは、夏の日の濃い影の下にしか存在できない、そういうすっきりと明るいものなのだ。


 夏、からはまずなによりも郷愁、だ。セカイ系、はぁ?っていうスタンス。そんなことを気にする前に、細部の圧倒的な郷愁を楽しんでみせろよ、せつない、なんて安易な言葉で片付けずによ。一巻だけでも、と思い展開する。でもハイライトは旭日祭。でもそれは2巻以降。あれ?


ガールズ・ブルー (文春文庫)

ガールズ・ブルー (文春文庫)

 女の子用。ポプラ文庫の表紙の方がキャッチーで好きだけれど書影が出ないのだから仕方ない。スイーツ(笑)な女の子が世界とぎりぎり摩擦している、そのきらめきを堪能してもらいたい。そうして安心してもらいたいし、あたしもがんばろうと思ってもらいたいし、もしかしてあの子もそうなのかな、と思ってもらえるとうれしい。


夏化粧 (文春文庫)

夏化粧 (文春文庫)

 キャッチー表紙つながり。夏で、沖縄で、若いシングルマザーが奔走する。自らの赤ん坊のために。コミカルさ、異界とが描き出す、親の強い想いを知ってもらいたい。



ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)

ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)

 うぉん。夏って感じじゃないけれど、どこにもいけない(かもしれない)夏だからこそ、縦と横の広がりを、小説によって感じてもらいたい。古川日出男にはサマーバケーションEPという「まさに」な小説もあるのですが、まぁ本音はたくさん仕入れたのにあんまし動かないから、てこ入れですw
 と思ったのですが、結局夏らしい表紙ということで、
gift (集英社文庫)

gift (集英社文庫)

 を追加してみました。ショートショート集だし読みやすいかなぁって(2008/07/19)。
 でも、結局『ベルカ、〜』も追加しましたw(2008/08/02)


 ここからの2作は読んだことがないけれど、信頼のおける作家さんということで。

夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)

夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)

 ほのぶん*2は、とてもやさしい文章を書く人だから、縁側に座って食べるラクトアイスのように、涼みの一助になれば、と思います。内容はわかりませんが。あと表紙がかわいいのもいいよね。


君が壊れてしまう前に (ピュアフル文庫)

君が壊れてしまう前に (ピュアフル文庫)

 表紙、と、トヨザキ社長が「少年=自由=無垢といった、ある種のファンタジーなどに見られる手垢にまみれた嘘八百や、偽善的な大人たちが求める清く正しく明るい(つまり、痴呆的)少年像をくつがえすため、露悪的なまでに正直な十四歳を描いてみせる。」*3というのにうんうんと頷いたので。やっぱ青春小説はこうでなっくっちゃ、と思うわせられるような、試みなんだろうなぁと未読の人間が感じ入る。


 で、いちおうすべてカバやパンダやハチとは別の出版社からのセレクトなんですよ。がっつり発注したので展開が楽しみだ。ポップも考えないとなぁ。


 追記(2008/07/08)
 ASAVAからのタレコミで急遽こいつもラインナップへ追加しました。

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

 かわいい表紙に、イーガンの山岸真さんで、もとサンリオSF文庫で、ウィキペディアによれば「奇抜なアイデアよりも、感傷的なラブストーリーを中心に据えた叙情的な作風。物語としての完成度が高く、日本語訳された長編はサンリオSF文庫からの4冊だけだが、熱烈な支持者が多い。」ってこれはみなぎってきたwwwwwwwやるな、河出文庫!wwww

 さらなる追記(2008/08/02)

神様のパズル (ハルキ文庫)

神様のパズル (ハルキ文庫)

 在庫が多くて平積みしやすかったというのと、作中ではほとんど田植えや稲刈りという感じで夏がメインだった印象があるので。
八月の舟 (文春文庫)

八月の舟 (文春文庫)

 えー、これは読んだことがないのですが、樋口有介だし、タイトルがまんまだし、ということで急遽選択しました。はい、やっつけです。
夕凪の街 桜の国 (双葉文庫)

夕凪の街 桜の国 (双葉文庫)

 さらなるやっつけ。小説ではなくなりました。しかし、これは原爆についての漫画なので。
ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫)

ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫)

 で、これも原爆つながり、ということで。や、むしろ秋山瑞人つながりというか時間SFの短編集だからというか、しかし表紙が一番恥ずかしいからけっこうどきどきしながら置いたのですが、いやぁまさか初速が一番いいとはw
 ええー総じて、SF色が濃くなりました。

*1:伊坂幸太郎:ヤマシューを獲ったのだから今回ノミネートされてすらいないのも道理なのか。まぁそんなことよりゴールデンスランバーは、た・し・かにおもしろかった。いさかんはこのまま読者を喜ばすことに血道をあげる職業作家でいてほしいものです。

*2:米澤穂信:先日、本気で本を買おうと思っているけれど何を買っていいかわからないというオーラを発揮して棚の間をうろうろされていた女の子に、「差し支えなければ……」とほのぶんをお勧めしたら『犬はどこだ (創元推理文庫)』をとてもうれしそうに選んで帰られました。あー、ああいうのはもうないかな、たぶん。

*3:文藝 2008年 05月号 [雑誌]p253下段より。