ブックスエコーロケーション

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社会体系へのコミット、あるいはインナースペースへの埋没

機動戦士ガンダム00 3 [DVD]

機動戦士ガンダム00 3 [DVD]

 確かのこのあたりから忙しくなってようつべで探す気がなくなってしまったんだなぁと回想。
 ガンダム00は、脚本家か監督かプロデューサーの意向かはわからないけれど、たぶんに実験SF的な手法が採用されていると思う。現在の地球と同じ社会背景を持った世界を舞台に、ソレスタルビーイングという試験薬を投入し社会システムがどのような変化を示すのか、それを描くことをひとつの目的に据えてあるようだ。社会システム(と人間)の変化とその脆弱さと強固さと無慈悲さを描こうとしている。キャラクターという個人だけでなく、それ以上のものを。そしてこの方法はもちろんおれたちの世界とも、テロの危険が常在化したわれわれの現実ともコミットする。引き較べざるを得ないし、たぶんそういうことを考えさせることも目的のひとつなのだろう*1
 ただ既存のキャラクター消費者のために、上記の側面はひどく抑制されている。抑圧、かもしれない。このおかげでガンダム00は妙にぎこちなく、どっちつかずの演出がめだって、居心地が悪いのだ。日本在住で、一般市民の目から世界を描くために配置された学生キャラが、そのロールゆえに二度もテロ、というか事件に巻き込まれている点だ。まぁだからこそ、視聴者の意表を突くのには成功しているのかもしれない。さらに言えば、キャラクターに感情移入/消費させることで理解を助長する、という方法が安易に多用されすぎているために#10ではなんと4人も涙を流して泣いている。おいおいちょっと泣かせすぎだろ、と笑ってしまった。
 ただ、この妙なぎこちなさと居心地の悪さが突き抜けて、妙に味のある演出になった回があった。#08の「無差別報復」だ。この回、ガンダムマイスターはテロ組織への武力介入を行い、そのあいだトレミー・クルー女性班は海水浴を行っていた。もちろんこれは女性キャラのサービスショットを見せるためであり、まぁ腐女子だけでなくオタクも取り込んでおこうという努力の現われではあるのだろうけれど、ここで重要なのはオンタイムで武力介入と海水浴が描かれることだ。そして戦術予報士によればここまできたらはもうわたしたちにはどうにもならない、から海水浴するのだと言っており、武力介入が行われていることを知っていることだ。戦争が行われていることを知っているけれども、その事実に心を痛めてもいるのだけれど、海水浴する。実に日本人的だ、とこれを皮肉に受け止めるのは確かに安易かもしれないけれど、このシーンにだけ、ずっとつきまとっていた居心地の悪さがすっと消滅したのは事実だ。しっくりきた。おれの、ガンダムはわれわれの社会にコミットするべき、という期待がきちんと解消された、その瞬間だったのだ。


 現状、おれの描く小説はこういう社会にコミットしていく方法が、採用できない。社会システムについて、政治経済金融外交軍事について決定的に知識不足だからだ。伊藤計劃のようにシステムの終末に安らぎを見出したり、野尻抱介のように夢や希望にあふれる未来のヴィジョンも、感得には程遠いのだ。それを知らずに描くことは本当に恐い、と感じている。なので反動で内側に向かっている。思索的にならざるを得ない。ずぶずぶと沈んでいる。いま書いているのはそういう小説になっている。一人称は間違えたのかもしれない、といまさらながらに思っている。もし「彼女」が世界の成り立ちに興味が持てず、ただただ男の子に想われたい、想いに応えたいというひどくちいさなSociety*2に終始してしまったり、安易に世界を救い出したいと言い出さないよう、十全に注意していかなければならない。禁欲さが必要だ。悩んだり考えたり自家中毒に陥ったりしてもいいけれど、決して簡単な方法を採用しないこと。ここに、自分に厳命します。


 あ、そうそう#09の狙撃手とオペレーターの傷の見せ合いシーン、あれちょっと安易に頭、なですぎ。あーなでたいなでたいとおれが思ってたら本当になでやがった。あすこはぎりぎりまで引っぱって狙撃手は触れない。んで、無事に帰還してからふれあいのシーンを用意すべきでしょ。そのほうが絶対にぐっとくるのに、じらされた視聴者は。だから『時かけ』の千昭と真琴の別れのシーン、おおキスするのかするぞするぞするぞ、しねぇのかよ!ちょくしょーやりやがった!!と拍手喝采なわけです、おれ。

*1:ただ勘違いして欲しくないのは#10の時点ではまだはっきりと「戦争=悪」か「戦争=必要悪」なのか「戦争=現象」という視点/イデオロギーで描かれていない点だ。いやこの見方はおれがこういう描き方をする際には公平であるべき、という先入観があるからかもしれない。

*2:仲間の交際!!クー!ボロボロ(涙のこぼれる音)。