すべてはゼロから始めるために

小説家志望の雑記です。

『流れ星はぐれ星』

小説すばる 2007年 09月号 [雑誌]

小説すばる 2007年 09月号 [雑誌]

 いくつ恋を重ねても、いつまでも消えぬ面影がある……。
 星に導かれ、ビビアンは美しく変わり果てた姿で男のもとに向かう。

 水森サトリの短篇。読後思ったのは「変な小説」だ。もちろんほめてる。デビュー作の『でかい月だな』を期待していると、いい意味で肩透かしをくらう。「おお、なんだこれ、こんなのも書けるのか。主人公がオカマで、初恋の不可能性をめぐる物語と思わせて全然ナイーブじゃないじゃん」と思うわけだ。軽くてもやもやとやわらかくて、それでもポップでどうにもすこし不思議。
 結末までなにが起こるのかいまいちわからないのだけれど、それはだからこその中間小説なのか。だって結局、ビビアンの恋愛が成就することはないし、想い人の性格によって決定的な決裂が生じることはない。この宙ぶらりんさが、どうにもこうにもタイトルへとつながっていく。あと身体の違和っていうモチーフとも丁寧なリンク。
 ビビアンの性格上、まったく話は暗くならないのだから、とっても軽快に読み進められる。扱っているモチーフは読者をいろいろ考えさせられるようなことなのだけれど、ビビアンがそれを痛快に跳ね飛ばしていく姿には、勇気づけられる、と言おうか。