すべてはゼロから始めるために

小説家志望の雑記です。

『シャギードッグ 天使の序章』

シャギードッグ 天使の序章 (GA文庫)

シャギードッグ 天使の序章 (GA文庫)

〈日本震災〉後の近未来日本。平凡な日常を愛する高校生、大介は、遊園地で着ぐるみのバイト中、拳銃自殺を目撃してしまう。自殺した男に拳銃を渡した美少女の名は「オズ」。しかし衆人環視の中、彼女を認識したのはなんと、大介だけだった。この事件を発端に、大介の「日常」が崩れ出す。見知らぬ幼なじみまりん、死にたがりの「オズ」、暗躍する異能者たち。幼くして脳内導入/インストールされた大介の格闘プログラムに、隠されていた秘密とは──!? 左手の紋章が光る時、視認不可の瞬速バトルが繰り広げられる!
 衝撃の近未来ハイスピード格闘SFアクション──〈チェック〉!

 この作品に関して言えるのは、どんなにチープで安っぽくてB級で時代遅れで根拠に欠けるSF設定があったとしても、堂々とやってしまえばとがめられることはない、ってことじゃねぇのか、ってことだ。

 おうおう、こいつは久々に燃える格闘SFアクションだ!と言い切ってしまうのはけれどもやっぱり、どう考えても早計で、おれが一番おもしろいと感じたのは、大介とオズが〈ゾーン〉の中で歩み寄っていく、そのイメージの奔流だ。彼と彼女は自身の持ちうる異能の力によって孤高たらねばならず、それゆえにふたりは恋愛感情とは別のベクトルで/そうとも読めるがそれはもちろんミスリードである、そこにあるのは共感と共有と、冷静なまでの理解だ。他者とのコミュニケーションの快復が、実に愚直に、そして鮮やかなイメージの奔流によって描かれる。そしてその関係は、まりんというもうひとりのトラウマを抱えた少女を加えることでまったく別のトライアングルへと昇華する。それまでの胸の痛くなるようなすれ違いを描いていた、三点は見事につながり、圧倒的な力でもって決戦へと赴くのだ。この、恋愛系を外した、二項対立崩しは、戦闘シーンの描写もさることながら、実に巧みであると、思うのだ。

 他にも、圧縮された大量の情報が、詰め込みすぎと言われようとも、解釈の欲求を刺激してやまないし、それがわかる自分も頭が良くなったのではないのかと錯覚するし、何より秀逸なのはエピローグの、きちんとした長さだ。しっかりと締めてくれているから、ただただ物語の流れに流されるのではなく、きちんとこの作品は作品でピリオドを打ってある点も、かなり好印象。ほら、やっぱ考えさせられる作品ってのはなんか作者に「ほら、ここまでヒントがあるんだから、どうよ、次はわかるかい?」と挑戦されているようで、「くっそ、負けるか!(笑)」って思うんだよなぁ〜。


 たぶん、このライトノベルSFは昨今のメインストリームとは一線を描いているのではないのかと思う。萌えのベクトルがキャラクターそのものではなく、ガジェットや、大介とオズとまりんの関係性/つながりそのものへ向いていると思うからだ。
 そうしておれは、ずっとこういうライトノベルを、ライトノベルとして読んできていた。もちろん嗜好の問題だ。最近読んだ、ライトノベルSFと技術云々を比較するならこっちの方がだんちでうまいし、文章も比喩にたまに首をかしげるぐらいでかなりこなれているとも思う。戦闘シーンは体言止めを多用しなくてもかなり速く感じたのも、収穫だった、勉強になった。でも、それでもこれはライトノベルSFであって、SFではなくて、もちろん一般文芸でもなくて、でも、それでもこれを楽しいと思う/思って読んできた自分の感情はリアルだし、それを忘れる必要はないんだなと、再確認させていただきました。ありがとございます。
 まぁさすがは七尾あきら、ウブチンの同期なだけは、ありますな。