ブックスエコーロケーション

「SFとボクらの場所」をテーマにした本屋のブログです。2024年11月18日実店舗OPEN!!

2025年に読んでおもしろかった本

 現代的なテクノロジーと人の営みがテーマになったSF作品集。「いまここ」を書くことと、そこからの小説的な跳躍がとてもよくてどの短篇もとても楽しめた。初期作品の『ヨハネスブルグの天使たち』を想起して懐かしくもなった。特に好きだったのが分断とSNSについて書かれた「暗号の子」「ローパス・フィルター」「明晰夢」か。「ペイル・ブルー・ドット」は爽やかさが別格だったし、あとがきの尾根道の話も背筋が伸びるようだった。

 タイトル通りの切ない時間SFかと思ったら、伴名練らしいツイストと過去から現代へと通じる問題意識がしっかり反映されていて、とても唸らされた。ふたりの主人公たちもとても魅力的で、彼女たちの奮闘と活躍に引っぱられるように読み進めていくと、作品からあふれ出る「祈り」に思いもよらず感動していた。あとがきも、時間SFガイドもブックガイドとして読みどころがたっぷりでとてもいい本だった。

 ポリコレ系文化人が弱者男性芸人に脅されて、部屋に置かざるをえなくなる冒頭からずっと、読者を刺してくる言葉と展開で、男性の自分には読み進めるのがなかなかきつい読書となった。けれども、物語のラストはさすがは大前粟生という信頼を置いている書き手の、真に迫ったぐっと来る展開でとてもよかった。単純なホモソーシャルに回収されない、この作品で提示される答え/祈りのようなものが誰かの希望になればいいな、と心から思う1冊だった。


 旧年中に記事を更新したかったのですが思ったよりも年末に動けず、店舗の大掃除をしたら力尽きておりました。他にも読んでいないわけではないのですが、感想をまとめるとたいへんなのでいったんこの3冊ということで、よろしくお願いします。2026年の読書は引き続き積読を減らしつつ、フィクション以外にも手を広げていきたいと思います。