今回お誘いいただいて半杓亭でのビブリオバトルに参加してきました。
結果、なんとチャンプ本に選ばれました~。ありがとうございました。
飛び道具すぎて選ばれるとは思っていないかったので、めちゃくちゃ挙動不審になっていたと思います。もっと素直に喜んだりお礼を言えたらよかったですね。うーん、なかなかむつかしい。
でもほんと選んだ本の力だなぁと思ってます。なので、どんな感じで語ったのか。その説明のもとにした原稿を公開しようと思います。この通り話したわけではないですが大筋でこんな感じでした。
- 作者: 高橋源一郎
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2013/10/31
- メディア: Kindle版
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こんにちは、やつはみ喫茶読書会の主宰をやっています。ビブリオバトル、実はそんなに得意ではないのですが、一生懸命やらせていただきます。よろしくお願いします。
にしても、さすがに演劇をやっておられる方々はしゃべりが上手ですね、さいごというのはこう、緊張が高まって一周回ってふわふわしてしまいますね。ここまできたらなにをしゃべってもしょうがないというか。
さて、今日そんなふわふわした感じで紹介するのが、これです。
『ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ』です。
そう宮澤賢治の本そのものではなく、トリビュート本です。高橋源一郎という作家が書いた小説です。
トリビュート、おわかりですかね。音楽ではよくあるやつですよね。
なので、この本も24篇の短篇が収録されているんですが、音楽になぞらえてかA面とB面があります。
収録タイトルは、「注文の多い料理店」、「セロ弾きのゴーシュ」、さきにとりあげられた「オッベルとゾウ」などなど聞いたことのあるものがいっぱいあります。
ただ音楽になぞらえて言えばこの本に収録されている小説はコピーでもなければ、カバーでもありません。原作を継ぎ接ぎししたマッシュアップとも異なります。オリジナルです。完璧に。紛れもなくオリジナルです。唯一タイトルが同じだけ。そう同じ題名でありながらまったく別の作品になっています。であるにもかかわらず確かに宮澤賢治を感じるんです。そこがすごいし、おもしろいところなんです。
なかでもとくに好きな一篇は「永訣の朝」です。
もとになった「永訣の朝」は宮澤賢治の妹が亡くなる日をモチーフにしたと言われる一篇ですね。
けふのうちに
とほくへいってしまふわたくしのいもうとよ
みぞれがふっておもてはへんにあかるいのだ
では、高橋源一郎は同じ題名でどんな小説を書いたのか。
あるバーで朗読会が開かれます。ただそのバーで行われる朗読会には、演者がいません。朗読するひとはやってきたお客さんなんです。やってきたお客さんが即興で「シ」を読みます。あるお客は人生に疲れ切っており飛び降り自殺を示唆します。ある少女は自分が学校でも家庭でも透明であり限界であることを読みます。さらにそこのマスターは寝る前にいつも死ぬ瞬間の情景をさまざまに思い描く人物であったりします。そうです、この物語で語られる「シ」は「詩(ポエム)」であり「死(デス)」でもあるんですね。
そしてそれは、本来の「永訣の朝」に通じてきます。
妹の死を通じて描かれる詩です。
生きて死ぬことをどのように捉えるのか、両方ともそのことについて書かれた作品であるなと思いました。
実際いま日常を生きていくうえではそんなことをあまり考えることなく生きていくことができます。
ですが、この小説、あるいは原作となった詩を読むことであたかも自分のことのように考える、そういう契機になる作品です。おすすめです。
どうでしょうか、読みたくなったでしょうか。
下の画像は当日のお茶とお菓子でした~。かわーいー。