ブックスエコーロケーション

「SFとボクらの場所」をテーマにした本屋のブログです。実店舗はありません。開業準備中。

4月の読書まとめ「耳刈ネルリ」シリーズなど

読んだ本の数:12冊
読んだページ数:2541ページ


■五色の舟 (ビームコミックス)
 すばらしいコミック化だった。あわいタッチの絵柄が、原作短篇の語りの持つ雰囲気を見事に描き出している。読了日:4月28日 著者:近藤ようこ,津原泰水


狼のようなイルマ

狼のようなイルマ

■狼のようなイルマ
 プルーフを送っていただく。女性刑事ものの、傑作エンタメ。読了日:4月26日 著者:結城充考


ここは退屈迎えに来て (幻冬舎文庫)

ここは退屈迎えに来て (幻冬舎文庫)

■ここは退屈迎えに来て (幻冬舎文庫)
 読書会用。圧倒的ローカルガール小説。抽象化された普遍性ではなく、具体的な細部の積み重ねが、心を捻じ切るような痛みをもたらす。充実の不在がタイトルに滲み出ていてる。でも短篇によっては幸福が思索を手放すとも書いてあり、その辺り一筋縄ではいかないのがさすがか。読了日:4月21日 著者:山内マリコ


完璧な夏の日〈下〉 (創元SF文庫)

完璧な夏の日〈下〉 (創元SF文庫)

■完璧な夏の日〈下〉 (創元SF文庫)
 WW2は終結し、歴史そのものは現実のそれと大きな変化がなく続いていく。背後で暗躍する超人たちの存在には不老という影が忍び寄り、それは己を支えるための確たる「完璧な夏の日」を求めることとなる。でもそれはおそらく誰しもそうであるように人類普遍のことなのだろうとも思った。だからこれは歴史を語り直す物語であると同時に、愛についての物語なのだろう。卑近な言い方をすれば、すごく好みなセカイ系であった。読了日:4月17日 著者:ラヴィ・ティドハー


耳刈ネルリと十一人の一年十一組 (ファミ通文庫)

耳刈ネルリと十一人の一年十一組 (ファミ通文庫)

耳刈ネルリと十一人の一年十一組 (ファミ通文庫)
 まさかまさかのこのエンディング。レイチとネルリの温室密会のなんとなまめかしくもうつくしい情景か。そこを描いておいてのラストシーン。ここを書けるか書けないかでこのシリーズはぜんぜん違う物語になる。だからこれは青春と挫折の物語。ちょうどよい分量でここまでしっかり感情を揺さぶってくるのだから、やっぱりおもしろいんだなぁ。読了日:4月12日 著者:石川博品


耳刈ネルリと奪われた七人の花婿 (ファミ通文庫)

耳刈ネルリと奪われた七人の花婿 (ファミ通文庫)

耳刈ネルリと奪われた七人の花婿 (ファミ通文庫)
 圧倒的ミュージカル。メインの劇の背後で動く事件もあり、とても丁寧でいいし、大円団がレイチの感情につながっていくのもすばらしい展開。これは圧倒的青春小説だ。読みたかったライトノベルだ。一気読み徹夜をやってしまうとか大学生か。読了日:4月12日 著者:石川博品


月刊ニュータイプ 2015年 05 月号
 もちろん伊藤計劃の両作品コミック化を目当てに。本誌の方は読むと見たい番組が増えそうなのでちょっとどうするか悩んでいる。でもとりあえずデレマスの記事はちゃんと読もう、そうしよう。読了日:4月11日


本屋大賞2015 (本の雑誌増刊)

本屋大賞2015 (本の雑誌増刊)

本屋大賞2015 (本の雑誌増刊)
 ご恵投いただきました。システム上の問題を指摘するのなら一次投票の10位以下をチェックすればいいと思います。そのためにわざわざ全部載っているのですから。→毎年のことなのでテンプレ化すべきだと思う。「ランキングが毎年売れ筋でつまらない → この本でランキング10位以下をチェックすれば?」読了日:4月10日


耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳 (ファミ通文庫)

耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳 (ファミ通文庫)

耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳 (ファミ通文庫)
 主人公・レイチの語りのアッパーさと、しっかりと構築された社会構造がうまく噛み合っていて、うすっぺらくもないし重くなりすぎてもいない、とても絶妙なバランスだった。地の文のアッパーさがむしろ主人公の本音を隠す役割を担って会話のほうが素直だったりするのもおもしろい逆転だと思ったし、ひいてはそれが主人公の自己評価を隠すかたちに効いているのもうまいなぁと思った。いくらでもシリアスな方向に振れる設定で、ここまでその設定を活かしたドタバタを見せられると唸るしかない。おもしろかった。読了日:4月8日 著者:石川博品


SFが読みたい! 2015年版

SFが読みたい! 2015年版

SFが読みたい! 2015年版
 うむ、『オービタルクラウド』と『火星の人』を読まないとだ。読了日:4月7日 著者:S-Fマガジン編集部


エンパイア・スター (1980年) (サンリオSF文庫)

エンパイア・スター (1980年) (サンリオSF文庫)

■エンパイア・スター (1980年) (サンリオSF文庫)
 シンプレックス、コンプレックス、マルチプレックス思考に基づいた知的階級社会というのはある意味、現生人類への絶望から端を発しているように思えてならない。構造的な部分もかなり素直に読めたが、やはりここは新訳で読み直した方がよかったのかも。『ドリフトグラス』、買うかなぁ。読了日:4月7日 著者:サミュエル・R・ディレーニ


完璧な夏の日〈上〉 (創元SF文庫)

完璧な夏の日〈上〉 (創元SF文庫)

■完璧な夏の日〈上〉 (創元SF文庫)
 なんだこれ。陰鬱な第二次世界大戦下を背景に、超人同士の死闘が、英国スパイの回想によって語られる歴史改変SF。文章が要所要所でちょっと信じられないレベルでエモくてすごいすごいってなってたら、クララ・完璧な夏の日・フォーマフトの登場によって最高潮に達した。まさかシーン描写がうつくし過ぎて読んでるこっちが気持ち悪くなるなんて。この情景にはやはり作者のユダヤ人的な原風景が反映されているんだろうか。WW2をどう終わらせるかも含め、下巻がほんとうに楽しみだ。読了日:4月6日 著者:ラヴィ・ティドハー