読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

すべてはゼロから始めるために

小説家志望の雑記です。

舞城王太郎『好き好き大好き超愛してる』

好き好き大好き超愛してる。 (講談社文庫)

好き好き大好き超愛してる。 (講談社文庫)

 愛は祈りだ。僕は祈る。僕の好きな人たちに皆そろって幸せになってほしい。それぞれの願いを叶えてほしい。温かい場所で、あるいは涼しい場所で、とにかく心地よい場所で、それぞれの好きな人たちに囲まれて楽しく暮らしてほしい。最大の幸福が空から皆に降り注ぐといい。僕は世界中のすべての人たちが好きだ。名前を知っている人、知らない人、これから知ることになる人、これからも知らずに終わる人、そういう人たちを皆愛している。なぜならうまくすれば僕とそういう人たちはとても仲良くなれるし、そういう可能性があるということで、僕にとっては皆を愛するに十分なのだ。世界の全ての人々、皆の持つ僕との違いなんてもちろん僕はかまわない。人は皆違って当然だ。皆の欠点や失策や間違いについてすら僕はどうでもいい。何かの偶然で知り合いになれる、ひょっとしたら友達になれる、もしかすると、お互いにとても大事な存在になれる、そういう可能性があるということで、僕は僕以外の人全員のことが好きなのだ。一人一人、知り合えばさらに、個別に愛することができる。僕達はたまたまお互いのことを知らないけれど、知り合ったら、うまくすれば、もしかすると、さらに深く強く愛し合えるのだ。僕はだから皆のために祈る。祈りはそのまま愛なのだ。

 ペラい日本語と難病もののフォーマットで描くのは、舞城王太郎のまっとうでまっすぐな愛だ。ただ彼はここからさらに「嘘」を獲得し、『バイオーグ・トリニティ』へとつながっていく。