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すべてはゼロから始めるために

小説家志望の雑記です。

長谷敏司『戦略拠点32098 楽園』

 青く深く広がる空に、輝く白い雲。波打つ緑の草原。大地に突き立つ幾多の廃宇宙戦艦。―千年におよぶ星間戦争のさなか、敵が必死になって守る謎の惑星に、ひとり降下したヴァロアは、そこで、敵のロボット兵ガダルバと少女マリアに出会った。いつしか調査に倦み、二人と暮らす牧歌的な生活に慣れた頃、彼はその星と少女に秘められた恐ろしい真実に気づいた! 新鋭が描く胸打つSFロマン。第6回スニーカー大賞金賞受賞作品。

BEATLESS』『あなたのための物語』「円環少女」シリーズの長谷敏司のデビュー作。長らくスニーカー文庫版は絶版となっており、今回は角川書店のKindle70%offセール合わせて購入した。でも読み終わってもう一度、紙の本で手元に置いておきたくなった。感傷だとは思う。作中の言葉を借りれば「誤差」ということになる。キャラクターにはストーリーを展開するための役割が存在するし、作中ではそれは「歯車」として表現される。読者/おのれが「誤差」であり、「歯車」であることを強く教えてくれる物語だ。でも読めてよかった。これは、いまのおれのために書かれた小説だった。大好きな小説になった。シチュエーションもモチーフも、テーマの処理の仕方も、とてもよかった。作家にしてみれば昔の小説を好きと言われるのはやっぱりどこかさみしいというか残念に思うところもあるはずだろうけれども。すごい小説、優れた小説は自分よりも優れた読み手の力を借りれば大して苦労することなく出会うことができるようになった。でも、これは自分のために書かれた小説だ、と錯覚してしまうほど好きになる小説にはそういう方法ではなかなか出会えない。こういうことがあるから実際に読んでみるまでわからない。人生は有限で物語は無限にあって、予備知識なしで出会ってしまうともう分析なんかできなくなってしまう*1
 長谷敏司BEATLESS』は英訳も進んでおり、今回の日本SF大賞の候補作にもなっている。昨年末のコミケではイラストを描いたredjuice による『INSIDE BEATLESS』も発売されている。とらのあなだけでなくAmazonでも取り扱いを始めたようで、こちらもファン必携のタイトルだ。
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*1:だから古川日出男の『LOVE (新潮文庫)』とかあとづけでどうにか色々説明できるようになったけれど、ただもう好きだとしか言い様がないものもある。