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すべてはゼロから始めるために

小説家志望の雑記です。

SよりもFにワンダーを感じるおすすめSF10選

読書

 読んでないとヤバイ(?)ってレベルの名作SF小説10選 - デマこい!を発端に口火を切った戦線は、読んでいてもたいして良いことはないSF名作私選十作 - 脳髄にアイスピックおすすめSF小説15選 - ここにいないのはへと拡大し、お前らわざわざ無理してSFなんて読もうとするんじゃねえよという6冊 - 万来堂日記3rd(仮)を生み落とすに至ったのだった!
 というわけで、なんだかSF小説を紹介する気運とのことで昨夜の内に10作選んだはいいのだけれど、休日の業か午前中には本流が流れ切ってしまって時期を逸した感が半端ないのですが、それでも図々しく好きなSF小説をおすすめしてみようと思います。
 いわゆるオールタイム・ベストというSFファンがよくやる自分の好きな小説を列挙する業の深い遊びです。これを手札にSFファンは水面下で異能バトルを繰り広げ温故知新盛者必衰のSF者の街道をひた走るのであります。あがりはどこだ。
 なお、タイトルにもありますが、SFの中にも色々なサブジャンルがあって、改めてリストを作成してみたらやっぱりというかなんというかサイエンスよりフィクション寄りのものが好きみたいですね、おれ。
 さてこそ、さっそくまいりましょう。


バレエ・メカニック (ハヤカワ文庫JA)

バレエ・メカニック (ハヤカワ文庫JA)

 昏睡者の夢が染み出した幻視描写のすばらしさが、最後には圧倒的なサイバーパンク世界の現出へとつながっていく津原泰水の『バレエ・メカニック』。この本を読んだ時、第三章で描かれる未来がほんとうに羨ましすぎて、こんな世界が訪れるまできっと自分が生き延びることはないんだと気がつき、とても悔しくなった、そういう作品です。他に傑作短篇集『11 eleven』もおすすめです。「五色の舟」マジ傑作。


ラピスラズリ (ちくま文庫)

ラピスラズリ (ちくま文庫)

 幻視つながりというわけでもないのですが、幻想文学から山尾悠子の『ラピスラズリ』を。山尾悠子なら他におすすめすべきタイトルがいっぱいあるとお叱りいただくことになるとは思うのですが、やはり廉価で入手できるのは大きいのです。冬のあいだ眠り続ける〈冬眠者〉と人形、そして春の目覚めの物語。描かれるストーリーの精緻さと難解さもさることながら、読んでいて恐いぐらい気持ちよくさせられる文体にはもうなんでしょう、文章で脳みそを直接いじられてるんじゃないのかってぐらいの酩酊感があります。


言壺 (ハヤカワ文庫JA)

言壺 (ハヤカワ文庫JA)

 文章の、言葉のすごさを思い知らされるということでは神林長平の傑作言語SF『言壺』も負けていません。「私を生んだのは姉だった」という一文から世界が改変されてしまう、それを読書の過程で不思議と納得させられてしまう。力技でねじ伏せられた感じではなくて素直に受け止めてしまえる。いやマジでなんでなんでしょうかね、これ。


 続いてアンソロジー収録作の飛浩隆「自生の夢」ですが、これも言葉にまつわるSF小説です。いまある情報技術が進展していくことで生じるかもしれない至近未来のテクノロジカル・ランドスケープ。そこで描かれる、動的な〈無〉へのアプローチの結果として生じた〈忌字禍〉をめぐる対話の物語です、と書きましたが何を言っているのかいまいち自分でもよくわかっていないです、すみません。細部に注目するとあっさりと全体を見失ってしまう濃密さだけで何度も読めます。なお『NOVA 8 ---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)』にはスピンオフが2編掲載されててそちらもおすすめ。ARをあっさり焼け野原にして描かれる世界には感嘆するしかありません。


屍者の帝国

屍者の帝国

 伊藤計劃にからめて、彼の絶筆を引き継いで完成させた円城塔の『屍者の帝国』です。フランケンシュタインの技術が広く一般化した19世紀末を舞台に、ジョン・ワトソンを主人公にしたスチーム・パンクSFなのですが、世界周遊冒険小説とも、邪神と闘う異能バトルものとも読める、読者の教養が試される円城塔のエンターテイメント小説です!


BEATLESS

BEATLESS

 上記と同様に昨年話題をさらったのが長谷敏司BEATLESS』。ボーイ・ミーツ・レプリカント――ヒトとモノと環境の総体としての人類が描かれる。きっとあと百年後には、なんでこんなことが小説になるんだろうと不思議に思われるのではないか、というほどの先見性がもうすばらしいのです。


 ライトノベルつながりで秋山瑞人イリヤの空、UFOの夏』を。いわゆるセカイ系ライトノベルとして紹介されることが多いのですが、ここで強調しておきたいのは作品全体に横溢する懐かしさと切なさを補填するのが圧倒的な書き込みであるということなんですよね。どうして自分はこんな体験ができなかったんだろうと思ってしまう、思わせられてしまう。すごい。


エンジン・サマー (扶桑社ミステリー)

エンジン・サマー (扶桑社ミステリー)

 夏つながりでジョン・クロウリーの『エンジン・サマー』を。機械文明が崩壊したはるかな未来、さまざまな遺物のなかで独自の文化を発展させどうにか延命している人類の物語です。この異形の世界を堪能した先に待つ、厳然たるSF的結末にはただただ打ちのめされました。


氷

 続いては氷によって閉ざされ崩壊しつつある世界を鮮烈に描いたアンナ・カヴァンの『氷』です。すごい小説で読んでいる最中に何度も襲われる終末のビジョンにくらくらしてページをめくる手がとまるとまる。で、紹介しようと調べたらこれ08年に復刊したのが絶版じゃないですかやだー。というわけで最近復刊した『ジュリアとバズーカ』を追記しておきます。他に『アサイラム・ピース』と、あとは『居心地の悪い部屋』や『短篇小説日和―英国異色傑作選 (ちくま文庫)』に短篇が収録されておりますね。


25時のバカンス 市川春子作品集(2) (アフタヌーンKC)

25時のバカンス 市川春子作品集(2) (アフタヌーンKC)

 そして最後はコミックで市川春子『25時のバカンス』です。今井哲也ぼくらのよあけ(1) (アフタヌーンKC)』か庄司創三文未来の家庭訪問 (アフタヌーンKC)』か迷ったのですがここは彼女で。初読時はSF設定の使い方にうなって、二回三回と繰り返し読んでいたらなんだろ会話がすごく心地いいんだなぁって思いました。いや実はいまこの文章を書きながら「月の葬式」の会話でぶわって涙腺が緩んでてあれーおかしいなぁなんでだろって。


 さて以上10タイトル、選んでみました。ここまで正味3時間。なんだかすごく時間がかかってしまったのは紹介しようと本棚から引っ張りだして気がついたら読んでいるから。まるでテスト期間中の模様替えのように書くべき文章から読む文章へと避難していまいます。いやはや。
 あと過去に似たような記事を書いているので、そちらも参考にどーぞー。
 かつてライトノベル読みだったSFファンによる10選 - すべてはゼロから始めるために
 きみに読んで欲しいゼロ年代のSF小説 - すべてはゼロから始めるために