ブックスエコーロケーション

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渡航『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』ガガガ文庫

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (ガガガ文庫)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (ガガガ文庫)

 孤独に負けず。友達もなく、彼女もなく。青春を謳歌するクラスメイトを見れば「あいつらは嘘つきだ。欺瞞だ。爆発しろ」とつぶやき、
将来の夢はと聞かれれば「働かないこと」とのたまう――そんなひねくれ高校生・八幡が生活指導の先生に連れてこられたのは、学校一の美少女・雪乃が所属する「奉仕部」。さえない僕がひょんなことから美少女と出会い……どう考えてもラブコメ展開!?  と思いきや、雪乃と八幡の残念な性格がどうしてもそれを許さない! 繰り広げられる間違いだらけの青春模様――俺の青春、どうしてこうなった!?

 ふはは、と何度も声に出して笑ってしまって3時間一気読みでございました。いやー、ほんと高校生の頃のおれに読ましてやりたいですねぇw 暗黒時代を通過してきたからこそ、こういう暗黒時代を過ごしてみたかった、そう思わせられる素晴らしい力強さでした。でもどっちにしろ暗黒時代には変わりない、というw なんというか「硬派タイプの新人がデビュー作でこけて、次作は生き残りをかけた萌えエロ」というまさにその典型のタイトルではあるのですが、ネタのはさみ方やキャラクターの魅せ方、会話のテンポのよさ、通底する現状を力強く肯定しようとする世界観、なにより「期待を裏切らず予想を裏切る」を地で行くストーリー運びなんかにはもう、ため息つくばかり。こういうタイプのライトノベルの、ひとつの到達点を読んだんだなぁ、という感慨がありました。あとおれ、タイトルをああいう風に使う作品に弱いんですよねぇw これで87年生まれとか聞いて乾いた笑いしか出てこないっすよ、いやマジで。んで、これ、おれが考えうるもっとも最良で(でもとても限定的ではあるけれど)圧倒的なフィクションの力を感じさせる作品でありました。読みながら、これで救われてるやつっていっぱいいるんだろうなぁと、なによりそこに、いまの自分を形成しているかつての自分も含まれているんだな、と思ったのでした。おすすめです。