すべてはゼロから始めるために

小説家志望の雑記です。

市川春子『25時のバカンス』

25時のバカンス 市川春子作品集(2) (アフタヌーンKC)

25時のバカンス 市川春子作品集(2) (アフタヌーンKC)

 市川春子待望の第2作品集がついに発売です。今回もアフタヌーンに掲載された短編が3編収録されております。待望だったので読まずにこの間のイベントではオススメですと紹介しそうになりましたがw いやもう本当にすばらしい3編で、『虫と歌』をご存知の方には「日下兄妹」のクオリティが3つも詰まっている、と言うようにしておりますw そうめちゃくちゃうまくなってるんですよ! 奇想とその提示の仕方と、キャラクターへの愛着とドラマ。「日下兄妹」にあったすばらしいバランス感覚にさらなる磨きがかかっておるのです。

  • 「25時のバカンス」前後編

 深海生物圏研究室に勤務する西乙女は、久しぶりに弟の甲太郎と再開する。深夜の海辺にて彼女が弟に見せたのは……。
 姉萌え。すばらしい。アイデアもさることながらさながら、ラストのオチはホワイダニットものにあるような、とてもせつない衝撃がある。すばらしい。

  • 「パンドラにて」

 土星の衛星に立地する「パンドラ女学院」。物言わぬ奇妙な新入生・ロロに気に入られたナナは、幼き日の記憶を思い起こす。
 このストーリーで培った少女性をまるごと犠牲にして描かれるラストにはマジ唸らされたぜ。幼い頃の友情を描いて感情移入させ、そこから見事にばっさりと裏切ってくれていっそ清々しいよ、ほんともうすばらしい。

  • 「月の葬式」

 勉強も親の期待もわかってしまう天才高校生。試験の日に乗る電車を「間違えた」彼は、行き深い北の果てで、ひとりの「王子」と出会う。
 冬の街と出会いと自分探しと解けない問題を含めて、とてもいい友情のお話でした。ただもう絵面的に穴がいっぱい開いているのはどうにも苦手でぞわぞわしましたね。すばらしかったけど、ぞわぞわw

 今回の作品集を読んで思ったのは本当にどれもSFをやっているのだなぁということ。この確信が何に由来するのかというと描かれる作品が普遍的なものが描かれつつも、すごくおれの倫理を揺さぶることにあるのだと思う。その揺さぶりがとてもぞわぞわぐるぐるする。すごくおもしろいのだなぁと思う。感傷に訴えつつも、別の側面でしっかりと裏切ってくれる。そしてその裏切りを悟らせない。すばらしい。おれってこういうSFが好きなんだなぁと改めて思わせられました。

虫と歌 市川春子作品集 (アフタヌーンKC)

虫と歌 市川春子作品集 (アフタヌーンKC)