すべてはゼロから始めるために

小説家志望の雑記です。

『統ばる島』池上永一

統ばる島

統ばる島

 すばるとは集まって一つになること――空に星座があるように。人と人、人と島、島と島、すべては繋がってこそ輝きを増す。祭の島、竹富島では、女は踊り、男は狂言を舞う。最南端の波照間島では、さらに南にあるという、伝説の楽園を目指す娘がいた――沖縄・八重山諸島の八つの島々を舞台に紡がれる物語は、島ごとに異なる色を見せ、最後には鮮やかに織り上げられる。豊穣な物語の祝福がここに。池上永一が満を持して放つ八つの島の物語。

 池上永一といえば村田蓮爾キャラデザでアニメ化した『シャングリ・ラ』や、前嶋重機がコミカライズした『レキオス』といった200キロバックネットぶっ刺さり豪速球SFや、ドラマ化舞台化した琉球王朝物『テンペスト』や琉球捕物『トロイメライ』などがありますが、今回読んだ『統ばる島』は『夏化粧』や『風車祭』のライン、神がいまだに生活に根ざしている異界としての沖縄を描いています。もちろんこの異界という言葉が曲者で、読者の住む現代を描くのですが、当然ですが縦に長い列島です、地域によって異なる生活様式や景観があるわけでそれを描いているといつの間にかまったく異なる世界に迷い込んでいる。些細な違いが気がつかないうちに、というのがポイントです。このズレが不思議とおもしろい。実に見事に迷い込まされている。神に翻弄されることが気持よく感じてしまう。神が確かに存在する世界では三人称も作者が顔を覗かせることなく、ストーリーに終始することができるのですが、やはりこれは池上永一でしか書けない小説でもあると思うのです。もちろん、こういう作風を一言でマジック・リアリズムと言ってしまえば説明したことになるのでしょうが。おれには信仰はありませんし、宗教はシステムやツールとして見ておりますので、いまだにそれがきちんと機能している小さな宇宙を見させてもらった、忌避感なしにそこにあるのだなぁと納得させられる、とてもよい小説でした。