ブックスエコーロケーション

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マクロスF

 この作品に魅力には戦闘シーンと、主人公たちの恋愛模様があることは改めて言うまでもないだろう。しかし彼らの恋愛は結局のところ最終話を経て、明確な結果が提示されない。エンディングがくそ、や物足りないという友人の意見に対して、しかしおれは存外あっさりと「まぁそんなものだろう」と思った。で、この違いはなんなのかと考えた。
 おそらくアルトが男性を意図的に排除されているからではないのか。
 作中で主人公・早乙女アルトは「ひめ」と呼ばれ女性に間違われるほどの美形であり、かつ歌舞伎では一流の女形であると設定される。これによって実に丁寧に男性さを、肉欲さを脱臭し、まだ未分化である「こども」であることを強調する描かれ方をしている。
 これによって得られるものとして、三角関係の安定がある。アルトが男として未分化であるのなら、いつまで経っても誰ともひっつくことはない。そこにあるのは安心してみられる恋愛模様だ。これによって全25話ぐいぐい引っぱっていったのである。
 なお補足であるは、本編でもっとも男であるオズマに対してアルトが「それでも大人か!?」と叫んだ際に「大人の前に男だ」と答えるシーンでも、アルトがそのことに気がつかない、ということがあげられるだろう。
 さらなる追記で言えば、「フレンドリー・ファイア」の、あのミシェルの過去の話の扱いが、たったあれだけの非常にぞんざいなものであった理由も、アルトとミシェルの「男」の物語となってしまうことを回避したためではないのかと思われるのだ。いや正直あれはもうちょっとちゃんと通奏低音にしてほしかった。

マクロスF (フロンティア) 1 [DVD]

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トライアングラー

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