すべてはゼロから始めるために

小説家志望の雑記です。

『バガボンド29』井上雄彦

 今回は70人斬りに対してどのように、武蔵とその周辺が受け止めていくのか、その後始末と見えたものが描かれる。でもやっぱり刮目すべきは「木の棒」であると思う。
 当たり前のことではあるけれど、剣道の竹刀と、居合いの刀*1では決定的にその振り方が違う。前者が叩くのであるのに対して、後者は斬るのである。包丁と一緒だ。叩いては切れない。包丁は引いて切る道具であり、刀はそのまったき延長にある。
 居合いをやっていたときはまずは腕力のなさで居合刀の重さに振り回されていたけれど、木刀でもってまずその切るという感覚をつかんだ。持っているものも自分の身体の延長として処理して、刀の重みだけで振り抜けば、ということだ。
 作中ではこれとまったく逆の作業を小川家直がやっていて、そうそう、とうなずいてしまった。しかしまぁ彼は本当に幸せだったのだろうか、と思うのだ。でも、なんというか彼は納得して死んでいそうで、けっきょくそれは彼が「人生の一大事」を見過ごさなかった、覇気ある武芸者であった、ということなのだろうな。

バガボンド(29)(モーニングKC)

バガボンド(29)(モーニングKC)

*1:最初から刃を焼いていない、専用の居合刀があります。