すべてはゼロから始めるために

小説家志望の雑記です。

古川日出男『聖家族』

 日本の果て、青森ヤシャガシマの名家・狗塚家。“ばば様”に見守られて生きてきた狗塚の孫たち三きょうだいは、今それぞれが歴史と記憶の果てに立っていた。かつて天狗とも呼ばれていた“異類の者”の技を身につけ、半ば人ならざる存在として生きている長男。長男ほど完成された存在になれなかったため一犯罪者となり死刑執行を待つ身の次男。実は異類の血を受け継いでいる夫の、三人目の子供を身ごもっている末の妹。彼ら彼女らの現状はどこから始まったのか。物語は遡る。異類の者がまだ人と交わっていなかった時代に。天狗の存在が当たり前だった時代に。あるいは秀吉の朝鮮征服時代に。あるいは日露戦争時に。あるいは李氏朝鮮の時代に。あるいは徳川綱吉の時代に。あるいは幕末に。すべての血と記憶がつながり、東北と日本が繋がり、日本とアジアが繋がってゆく。古川日出男が“妄想の東北”からもう一つの日本史を立ち上げる、恐るべき大長編。

 古川日出男公式サイト
 脱稿されたとのこと。お疲れ様でした。
 今年の夏は読むものがないと、嘆くことはないでしょうなぁ。
 そしてこの作品がどんな現象を巻き起こすのか、楽しみだ。