ブックスエコーロケーション

「SFとボクらの場所」をテーマにした本屋のブログです。実店舗はありません。開業準備中。

アニメ・意図

 いうまでもなく『スクライド』は最終話「夢」のためだけに描かれたアニメです。あの最終話「男と男がただただ、殴りあう」を描くためだけに第1話〜第25話が存在しておりその事実に、なんとまぁいさぎよいことか、とわれわれはひざを打つわけです。第1話〜第25話なんて飾りです。キャラクター消費の人にはそれがわからんのです!
 ネット・ラジオなるもの恩恵を久しぶりに浴び、なんか社会性を回復したようです。


 明日はなけなしのイチマンエンをおろして、グランドオープンするアニメイト松本店に威力偵察してきます。いや、ほら、コミック売り場とかライトノベルの棚とか、気になるじゃん。つーか、絶対お客がとられるわけでむーんなわけですよ。近所には複合商業施設の中にTUTAYAができてありゃりゃという状況で、さらに、なわけですよ。

 なんつか、時代小説ばっか売れてもたいしてうれしくないわけですよ。じゃあ何が売れたらうれしいのかって、なんだろ……売れるかなぁって思った本が売れたら?売れるってわかってる本が売れたら?売りたいと思って平積みにした本?ハヤカワ文庫、特にJAは思い入れのあるやつばっかだし、Jコレクションだってそう。友人が好きだって言ってたやつが売れたらおおって思うし、まったく知らない作家だとだれこれだれこれともなるんだよね。古川日出男の平積みが売れたらよっしゃ貢献できたなってにやりともするしイーガン買ってく人がいたら話しかけたくもなる。

 でもたぶん、こいつはずいぶんと繊細な感覚だと自分でも笑ってしまうのだけれど、棚を見て評価してもらいたいんだろうな。棚から、これをいじった人を、どんな人間なのか、どんな趣味嗜好で、こういう意識で棚を作ってるって読み取ってもらいたいんだ。おもしろいね、変なの、がんばってるなぁ、きも、とかなんでもいいから反応が欲しいのだ。新装開店したTUTAYAに威力偵察した際、文庫の棚を見たら寒気がするくらい売れ筋しか平積みされてなくて、あーこりゃ版元か取次の言いなりだなぁ、プレーンすぎるなぁと笑ってしまった。もちろん全部が全部、書店員が自分のやっていることに嗜好/思考をまじえられている、とは思わないし、おれだって現状雑誌の棚は放り投げている。実学系の文庫はぶっちゃけどうでもいいとも思っている。それでも商品は売れるし、棚は「それなり」に整っている。買って行く人はたぶん気がつかないし、それはどんなにいじった棚でも変わらない。

 いや、訂正。変わりは、する。

 おれは、満足する。好きなように、好きな本をいれ、積み、新刊コーナーから棚差しし、出版社のフェアをアレンジし、在庫があることが強みだと棚ぎゅうぎゅうに本をいれ、汚損立ち読みに怒りを覚え、発注しすぎた入荷数にひいひい言いながら残業する。どんなに小説が書けなくても、腰かけでやっている書店業だとしても、好きな本が売れるのはとてもうれしいのだ。

 そして残念ながら現状、こういうプリミティブな感情を少しずつ積み重ねていって、自分をつくっていくしかないのだと思っている。小説家志望の書店員というロールをやりつつ、小説家で書店員になるしかない。そう、この日記がその日の飾りにならんことを。
 ……神林長平過負荷都市 (ハヤカワ文庫JA)』を読んでいたら、こういう意識に引き上げてもらった。いや、引き戻してもらった、か。