すべてはゼロから始めるために

小説家志望の雑記です。

『夕凪の街 桜の国』

夕凪の街 桜の国 (双葉文庫)

夕凪の街 桜の国 (双葉文庫)

 初めて読んだ。インパクトが強すぎてびっくりした。昼飯中だったのに思わず机を叩いた。義憤なのか私憤なのかはわからなかったけれど、確かに怒りがあった。感情すらも論理の元に利用するおれにしては、本当に久しぶりにコントロールできない感情だった。いずれ中印パの国境あたりで戦術核が使われて月面みたいな風景が広がったりするだろうなと考えたり、つきあっていた女の子が広島出身で戦争教育の賜物なのか「戦争=悪」なんていうどぎつい反射を見せられてその反射具合にカルトに対するような寒気すら覚えたことがあったりする、そんなおれではありますが、今回『夕凪の街 桜の国』を読んでとんでもなく感情が揺さぶられた。方言が、感情移入を高めているいのかと思ったけれど*1、たぶんそうじゃないんだな、と思った。
 この作品は、どうしようもなく低い視点から「これからまだまだ生きていいはずの命がざっくりと無慈悲に奪われる」ことがそのまま描かれていたからだ。かぎかっこの中身に対して、無性に腹が立った。「命よりは大切なのもはない」なんていう大きな物語をこれほど低い視点から悲劇ではなく公平に、それなのに殴りつけるように描けているのもすごいと思った。この作品にあるのは決して感傷で悲劇的に彩られた世界ではなく、公平で誰にでもあるはずの営みでしかないから、こんなにも胸に来るのだと思った。