すべてはゼロから始めるために

小説家志望の雑記です。

『幼年期の終わり』

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

 地球上空に、突如として現れた巨大な宇宙船。オーヴァーロード(最高君主)と呼ばれる異星人は姿を見せることなく人類を統治し、平和で理想的な社会をもたらした。彼らの真の目的はなにか?異星人との遭遇によって新たな道を歩み始める人類の姿を哲学的に描いた傑作SF。

 スケールの大きな、思考実験小説。残念ながらおれの感想として、この作品で描かれている世界は「未来」ではなく「思考実験」の枠組みをでない。それがちと残念ではあるが、それでもきっちりと考えられているおかげか、『夏への扉』ほどの劣化は感じなかった。やっぱり扱っているモチーフの大きさ、巨大なスケール感がSFの醍醐味であるなら、そいつをいくらでも楽しめる作品であった。そしておそろしいほどのネタの宝庫。特に第3部の「最後の世代」に込められているコロニーや未来の記憶が過去へ影響を与えるネタをひとつひとつを取り出しても、いくらでも長編ができそうな豪華っぷり。そのネタとスケールの大きさだけですいすい読めて、楽しめる。
 おれはどうしても作品の視点が、人間のコミュニケーションへと向いてしまうので、こういう高く大きな視点から構築されている物語は、ずいぶんと勉強になる。