ブックスエコーロケーション

「SFとボクらの場所」をテーマにした本屋のブログです。実店舗はありません。開業準備中。

古川日出男メッタ斬り!

 そうだ池袋に行こう。 行ってきました。

 ★フルカワヒデオが喋る!
 古川日出男メッタ斬り!」
 古川日出男(小説家)×大森望(翻訳家)×豊崎由美(書評家)
 このトークは、『ハル、ハル、ハル』(河出書房新社)発刊記念トークショーです。
 あの古川日出男が、ついにあの二人にメッタ斬られる!?
 笑いあり、涙あり、バトルありの1対2の初対面ガチンココトークをお届けします。
 この物語もあなたが見てきた全ての物語の続編です!

会場

  • 池袋ジュンク堂本店4階の喫茶スペースにて1ドリンク付き1000円
  • 30分前に会場入りするおれ。同行者・エコダさんと合流、挨拶、その背後。会場入りする手ぶらでアロハシャツ?姿の古川日出男・登場、むしろ参上。う、うひゃあああと思いつつ、会釈。古川日出男も会釈→だれだこいつ?→ああ、ファンか、という表情の変化(笑)。びっくりしましたねぇとエコダさんと笑いあい打ち解けた感じに、席へ。
  • 男女比は1:1ぐらい。年齢層は20代前半(おれ)から40手前ぐらいか。編集さんが多いとはエコダさん談。
  • 向かって左から大森望古川日出男豊崎由美が着席。基本的に大森望豊崎由美両名が質問や解説、自説をぶち、それに古川日出男が解答・修正をいれ、語る際にはものすごい熱量で説明をかます。その瞬間はなんだか朗読ギグの雰囲気。不意に我に返り、「あ、やっぱおれ怒ってますね」と確認して苦笑というのが多かったか。あと、古川日出男豊崎由美は多動。


スタンスについて
 評論は読まない。「作家」として読まれるのがいや。だから経歴というか生い立ちを語るのもいや。「作家」がいたとしてもわざわざ別の「作品」を切り出してくるのだから、「作品」そのものを読んでほしい。「こっちはあらゆるやり方を提示しているんだから」
 懐の広い賞が好き。『アラビア〜』で日本SF大賞日本推理作家協会賞を受賞について。ジャンルに上下はないと考えている。でもジャンルがないのは嫌われるということを、ハヤカワSFコンテスト*1で「SFじゃない」と言われたことや、幻冬舎時代の2作で体感していたので、ミステリィ・SF(というかスリップストリームとかワイドスクリーンバロックだよねとおれは思いつつ)という風に読めなくもないで、授賞してもらったのはうれしかったとのこと。またコバルトの選考委員について、「好き嫌い」を持って選考に臨まないと、なにも決まらない、とも。
 具体的にほめられるのが好き。ほめられないとダメ。だから『アラビア〜』のあとの『サウンドトラック』と『〜のスロウボード』のスルーが辛く2年ほど書けなかった時期があったとのこと。同様に、『サマバケ』の売れなささや『ゴッド・スター』の読まれていない感触にへこみ、その状態が文藝秋の柴田元幸との対談に収録されることに。「柴田さんの父性にやられた」とのこと(笑)。ただそのへこみっぷりが特集にいい色を添えたといい、大森望に「狙ってやったんでしょう」とか「いっつもオレ参上みたいじゃねぇ」とか言われていた。
 文学賞を祭りに!スターシステムをもっと採用して「売れること」を考えなければいけない。売れれば作者も編集も出版社も読者もハッピーになるれるから。古川日出男はまず担当編集さんにその時の最高傑作を渡すようにしているとも。男性誌や女性誌で書評の欄が減っていることを受けて、出版社が本を売ろうとしていないと嘆くことも。


大八車について
 豊崎由美が「出版界・大八車論」を展開する。曰く、車輪の一方が作家で、もう一方が評論家。前を引っぱるのが編集や校閲や、つまり出版社で、うしろから大八車を押しているのが書評家や読者であるというもの。車輪の片っ方が大きすぎると同じところをぐるぐるぐるぐるしてしまう、今は圧倒的に作家の車輪の方が大きい、とのこと。
 それを受けて古川日出男はすぐさま「読者がひっぱらないと!」と言い、「だからもっと売れない作家の数を減らして、書評家がコンペをやって力をつけてもらわないと!」とのこと。豊崎社長は動揺、大森氏は泰然。これはメインの違いからか。


ハル、ハル、ハル』について
 冒頭の文章が呼び水となってキャラクターが次々に生まれた。冒頭は特に、詩的な書き方だったよう。だからこそおれ個人としては冒頭の文章は「ちょっとかっこつけすぎなんじゃないのかな」と思ったことがある種肯定されて、納得もできた。


『デーモン』@FICTION ZERO/NARRATIVE ZEROについて
「フィクション・ゼロ宣言」は昔から常に思っていることを書いた。この頃は純文学として読まれることが多くなっていたので、SFとあえて自分から言ってみた。「今」の古川日出男がどう思われるか興味があったから。「つづく」としたのは編集部の意向のよう。


〈東北サーガ〉について
 できるなら1冊で出したいのだが、上下巻になっていたら負けたと思って欲しい(笑)、とのこと。人を殴って殺せるような重さと厚さで、家宝になるような本にしたい。すでに目次は完成しているとのこと。ジャンルの枠組みを超えるために、4雑誌での連載を計画していた。ここまでいろいろな雑誌でやれば認めざるを得ないだろう、という意思。書き下ろしではなく、連載を採用したのも読者の反応を作品に逐次取り込んで突き詰めていきたかったから。取材したことをそのまま書くのではなく、全部残っているけれど全部忘れているから書ける、とのこと。また、クレオールとしての東北弁を創りだしたい、とも。中央への反抗を書くためには東北がとてもいい位置だった。


都知事メッタ斬り
 芥川賞選考委員のギャラを聞き、「小説書くか、政治やるかどっちかにしろ」とのこと。大森望豊崎由美ものって新潮連載作品にふれ、会場はどっかんどっかん爆笑のうずへ。シメで古川日出男が「都知事にこんなこと言っても殺されないから、ほんと日本は平和ですよ。でもひとりくらいは国家権力に対抗しないと」と言っていておれは濡れる。


いま注目している作家
 ケリー・リンク。『マジック・フォー・ビギナーズ (プラチナ・ファンタジイ)』も読んだし、SFマガジンに掲載されたのも読んだとのこと。しかし日本人作家にはまったく言及せず。おれみたいな人間に露骨に影響与えないためか。


質問コーナー
 おれが質問したのは、「動物の視点などを多用されていますが、昆虫はどうなのでしょうか?」であり、古川日出男は書くとしたら「トンボ」と「トンボの複眼がのぞいた世界」とおっしゃられた。

古川日出男の血液型当てゲーム
 上記質問コーナーで質問が出ないので豊崎社長が「じゃあ古川さんの血液型は?」と訊き、会場の人に挙手してもらうことに。おれとエコダさんはA型に手を上げる。当たりました。なんかほっこりとうれしかったり。


 つーか早く書かないと……と思っているとほら、先を越されてますよ。
 http://www.shueisha.co.jp/furukawa/message/index.html#0708a

*1:この際デビューしたのが森岡浩之