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小説家志望の雑記です。

『壜の中の手記』

壜の中の手記 (角川文庫)

壜の中の手記 (角川文庫)

 ビアスの失踪という米文学史上最大のミステリを題材に不気味なファンタジーを創造、エドガー賞に輝いた「壜の中の手記」、無人島で発見された奇怪な白骨に秘められた哀しくも恐ろしい愛の物語「豚の島の女王」など、途方もない奇想とねじれたユーモアに満ちた語り/騙りの天才ジェラルド・カーシュの異色短編集。

 奇想と、時に装飾過多で時に簡素で透徹された文体で描かれる、まさに「短編小説」がつまった作品集。現在では絶対にありえないだろう、とわかりきっているかったるい物語/設定を、「語り」の力によって見事に払拭している。この物語に、設定に酔いたいと読者に思わせられるような説得力を、獲得しているのがすごい。あとイギリスから見て、南米=異界ってイメージで物語中になにが起きても不思議ではない、という雰囲気作りもうまい。この部分は特に、KASUKAが日本の近代文学が読めないくせに海外文学なら全然気にせず咀嚼できることと関係しているような気がする。っていうか根源?
 ありきたりな物語を知らない世界で彩る物語が楽しいから、SFやファンタジーのコードを使いたがるんだろうなぁ、KASUKAは。
 特におもしろかったのは「豚の島の女王」(きもくてかなしい)と「ブライトンの怪物」(この発想にはびっくりしたと同時に、当時の原爆の脅威が伝わってきた)と「死こそわが同志」(どんな結末になるのかまったく想像できなかった)の三篇であった。
 あれ、でも南米物はひとつもないや(・_・;)