- 作者: 古川日出男
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/03
- メディア: 単行本
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生まれつき他人の顔を憶えられない青年が、神田川の源流から河口までを歩く。井の頭公園に湧く水をたどりながら、僕たちは海まで歩く――それは、永遠の夏休みのはじまりだった。ひととひとがつながりあうミラクル。おだやかな熱に包まれる再生の物語。
5を、読み終わったあとに10にしてくれるような小説。KASUKA'Sオールタイムベストの1位を見事に奪還した小説。本当にこの物語は幸福なヴィジョンにあふれていて、そのひとのつながりが見事に、ていねいに、しっくりくる様は本当に読んでよかったと思えるよう。今のKASUKAの、生活のあわただしさから来る殺伐加減をどうにも中和してくれるようで、うれしくてうれしくて仕方がなかった。こういう読み方もたまにはいいもんですね。つながっている感覚っていうのを見事に刺激してくれました。
それぞれ失っている/呪われている/探している/護っている人々が、神田川の源流から河口を目指し/それは夏休みの冒険、様々なひとに、ものに、土地に出会い/こんにちわと言って、別れ/さようならと言って、歩くことで/自転車にのることで/身体感覚を見つめなおすことによって、再生していく/再生できると/いくらでもサヴァイブできると教えてくれる物語。
相変わらずな、アクの強い文章/語りの妙技が冴え渡る文体と、延々と描かれることのないひとの顔。表紙の透明度の高さとあいまって、『サウンドトラック』とは違った、ポップチューンのようなさわやかな夏が描かれる。
ちなみにKASUKAは「ウナさん」に感情移入して読みました。なにせ立場が非常に近しかったものでね(笑)。