すべてはゼロから始めるために

小説家志望の雑記です。

『オイレンシュピーゲル壱』

「なんか世界とか救いてぇ―――」。あらゆるテロや犯罪が多発し『ロケットの街』とまで渾名された国際都市ミリオポリスに、「黒犬/シュヴァルツ」「紅犬/ロッター」「白犬/ヴァイス」と呼ばれる3人の少女がいた。彼女たちはこの街の治安を守る〈犬/ケルベルス〉遊撃小隊。飼い主たる警察組織MPBからの無線通信/いぬぶえ「全頭出撃/アル・シュトゥウルム!!」を合図に、最強武器を呼び込み機械の手足を自由自在に操り、獲物たる凶悪犯罪者に襲いかかる!
 クールでキュートでグロテスクな“死に至る悪ふざけ/オイレンシュピーゲル”開幕!

 読了。
 攻撃的な文体と設定で戦闘美少女物のライトノベルをブラッシュアップした作品。冲方丁による、最強の戦闘美少女物。ライトノベル作家がこれを読んだ後で、これを超える戦闘美少女物を書けるか書けないかでライトノベルのこれからは決まってくる。だってこれ以降、戦闘美少女物を読んでもこの作品の二番煎じとか焼き増しとかにしか思えないんだもん。そういう意味で最強の終止符。
 疾走感を重視した改行の多い文体は、特に読者に挑戦的でおもしろいものにしてやるからついてこられるか?と訊かれているようで負けてなるものか、って感じで読み進めてしまう。過剰なまでに誇張されたキャラクターが、持ちうる過去のトラウマと対峙し、それを都合三度繰り返してキャラクターの自己紹介となしているだけの作品なのに、決して飽きさせないの疾走感と文体意識によるストーリーテリングは本物。没入するために、熱中するために読むのが小説という娯楽の一側面であるならば、それをここまで見事に体現した小説はそうそうお目にかかれないのではないのかと思う。特に今のライトノベルの中では。
 シュヴァリエのローブルの役割と同じ「リヒャルトおじさん」はただ「言葉」だけで物語に介入し、「歴史」を改変しようとしている。これが後々この物語の駆動に大きな影響を与えることは想像に難くないだろう。