すべてはゼロから始めるために

小説家志望の雑記です。

『ネクラ少女は黒魔法で恋をする3』

 空口真帆、通称黒魔法。特技(?)と趣味は黒魔法。担任の永音先生の使いっぱしりをさせられつつ、憧れの一ノ瀬先輩がいる演劇部で練習に精を出す毎日だ。そんなある日、真帆のクラスに転校生がやってくる。名前は宮脇弥生。彼女は「私、生まれつき不幸なんです」と自分で言うくらい、小さな災難にこれでもかと見舞われ続けるから体質だが、まったくめげない可愛らしい女の子だ。しかし真帆は、彼女の回りに悪魔が浮かんでいるのを見てしまい、永音先生の命令で生意気な後輩・神門と一緒に調査する羽目になる。「こんなところを一ノ瀬先輩に見られたら誤解される!」とやきもきする真帆だったが……!?
 黒魔法少女の初恋&毒舌コメディ第3弾!

 なんというか、全体的に中途半端でした。
 既存のレールの上にはあるのは確かにわかるのだけれど(だからある種、安心して読めるだろうけれど)、エンターテイメントとして、いい意味での無軌道作さ/突き抜け感が足らない、全然足らない。キャラクター造詣/ギャグ/毒舌/物語の展開/戦闘シーン(!)も物足らないので、KASUKAには読むところがない。
 でもKASUKAが一番強く思ったのは、読みにくいということでした。それは主人公の一人称が、その文体が状況によってキャラクターの枠組みを外れて一人歩きして/作者に歩かされて、非常に散漫な印象を受けるというものです。しかしこの作品は決してその散漫さをウリに、作られた作品ではないということです。
 おそらくこの『ネクラ少女〜』シリーズは悪魔を主人公が撃退し、その過程によって「日常の中ではあまり考えることはないけれどそれでもちゃんと存在して生きていくうえで重要なこと」に気がついて成長する、という構造を持っています。ちなみに今作のテーマは「幸せはきっとどこにでもあるものなんだ」です。そういう意味では非常にわかりやすい構造を持っているのですけれど、作者と主人公の距離が一定ではなくて、それがたとえばギャグを言う時であったり/悪魔・黒魔法関係の話をする時だったり/テーマを直截的に述べる時だったりと、読者が構築している主人公像とのギャップが明確に文章に現れていて、散漫な印象が強くていけませんでした。
 特にラストシーンも主人公がこの事件を経て理解した考え、というよりも、作者に言わされた感が全面に出てきています。いや別に全面に出てくること自体が決して悪いわけではないのですが、そこで主人公と読者が実感を持てるまでの経験をこの書籍の中でしてこれたのか、とつい考えてしまうのです。
 次回は読者が感情移入せざるを得ないような、リーダビリティに富んだ文体を期待したいと思います。