すべてはゼロから始めるために

小説家志望の雑記です。

『ラギッド・ガール 廃園の天使Ⅱ』

人間の情報的似姿を官能素空間に送り込むという画期的な技術によって開設された仮想リゾート〈数値海岸〉。その技術的/精神的基盤には、直感像的全身感覚をもつ一人の醜い女の存在があった――〈数値海岸〉の開発秘話たる表題作、人間の訪問が途絶えた〈大途絶〉の真相を描く書き下ろし「魔述師」、〈夏の区界〉を蹂躙したランゴーニの誕生篇「蜘蛛の王」など全5篇を収録。〈数値海岸〉開設から『グラン・ヴァカンス』に至る数多の謎を明らかにし、現実と仮想の新たなる相克を準備する〈廃園の天使〉シリーズ待望の第2章。

あはははは、ははは、はは……
と、とにかく「阿形」にUnweaveされた「アンナ」はめちゃくちゃ恐いってことですっ。
では各作品について。わたくしがエレクトしたシーンを抽出していくということで(笑)
「夏の硝視体」では「ジュリー」がベッドの上で「ジョゼ」に向かって「ささっとこっちに来てよ」と言ったシーン。コートの女がようやく誰かわかって戦慄した。
「ラギッド・ガール」はこの時とは違って構造よりも細部へ視線がいきました。「阿形」は本当に「全身これ犀のけつ」なのに台詞回しが異常に美人でそのギャップが「阿形」をとってもチャーミングに魅せている。一番エレクトしたのは「アンナ」が「阿形」の頬に触れて角質化した表皮が剥落するシーン。痺れたのは「アンナ」だけじゃない。
「クローゼット」は雑誌掲載時とはオチが変わっていておおおお?となった。『ラギッド・ガール』という中短編集において中継ぎを非常に意識された改変といえるだろう。掲載時は恐怖がひたひた、という感じであったが、今作では不安定な未来が提示されて幕となる。一番エレクトしたのは普通に「ガウリ」の指先に球根の芽が生えるシーン。
「魔述師」は書き下ろしで〈大途絶〉の謎が明かされると、かつmixi大森望氏の「イーガンへの真っ向勝負」との言葉にかなーり期待して読む、読んで、唸って、震える。何を書いてもネタばれとはこのことか。でもせめてこれだけは訊かせて「コペツキ」ってやっぱり「ドラホーシュ」? 一番エレクトしたのは「レオーシュ」が花火の視点を獲得したシーン。また「魔述師」に関してはこんなうれしいハプニングもありましたな(笑)
「蜘蛛の王」。今作でもっともエンターテイメント性が高いのがこれ。アクションシーンと「ニムチェン」と「チットサーイ」のキャラクターの魅力でかなり読めます。飯が三杯いけます。ラストシーンまで一気です。「ラギッド・ガール」「クローゼット」「魔述師」が何度も読み返したくなるような細部の情報量で勝負してあるのに対して、「蜘蛛の王」は圧倒的な跳躍の疾走感で勝負してきます。これは破壊と苦痛と狂気の疾走感でもってラストまで持っていかれる『グラン・ヴァカンス』に通ずるものがあるのではないのでしょうか。もっともエレクトしたシーンは「ランゴーニ」が「チットサーイ」に「父」の姿を重ねて優しく声をかけるところ。つうかここって『グラン・ヴァカンス』で一番好きなシーンの「いいんだよ、ピエール」と似てるし!(笑)

まぁつまり何が言いたいかというと、『グラン・ヴァカンス』を読み直さなきゃな、ってことだ!!

なお今回でわかったことがあるとすれば、わたしはやっぱり論理よりも、意匠に萌えるってことですな。
つうかわたくし、飛先生のあの官能的な言語感覚がほしいですな、ごしごしこすってほしいですな、「阿形」がしたように。