すべてはゼロから始めるために

小説家志望の雑記です。

『四畳半神話体系』

四畳半神話大系

四畳半神話大系

大学三回生の春までの二年間を思い返してみて、実益のあることなど何一つしていないことを断言しておこう。異性との健全な交際、学問への精進、肉体の鍛錬など、社会的優位の人材となるための布石の数々をことごとく外し、異性からの孤立、学問の放棄、肉体の衰弱化などの打たんでも良い布石を狙い澄まして打ちまくってきたのは、なにゆえであるか。責任者に問いただす必要がある。責任者はどこか。(本文より抜粋)

太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞した森見登美彦の受賞第一作。『2006年度版 SFが読みたい!』では国内篇で10位にランクインしており「知的で完成度の高い男子大学生の超現実的日常」という謳い文句をほしいままにしています。
法界悋気旺盛な男子大学生が四畳半での唾棄すべき生活を韜晦に韜晦を重ねた文体で描く、というのは前作からの趣向でございますが、今作ではそれが4回繰り返されるという平行世界物。
まさに「ギャルゲー」がごとく見たことがあるような文章が繰り返されるのですが、各種入部するサークルの特異さやそれにまつわるエピソードがどこかずれているようで絡まっており、同じようでいてすこし違った世界がきちんと描き出されており、非常におもしろい。
そして最終話「八十日間四畳半一周」ではそれらの差異を集約し、漂流の中での孤独を描き、きちんと「無意味で楽しい毎日」の「意味」なるものを示そうとしている怒涛の展開は実に爽快でした。
各話で書かれる最後のやりとりを、微妙にずらした最終話のやりとりは実に笑顔物でした。
こういう本を読むと「まだまだ人も捨てたもんじゃねぇな」と思えます(笑)